日本勢の行方は?激変の鉄道メーカー勢力図 世界を席巻した「ビッグスリー」も今は昔

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この状況を一変させたのは中国だ。独自の高速列車の開発が思うように進まず、開発を断念。他国から技術移転をする方針に切り替えた。その際、ビッグスリーと川崎重工業から技術を得て、中国の地元メーカーである中国北車、中国南車が高速列車「和諧号」のライセンス生産を開始した。

2007年の高速鉄道開業に合わせ、和諧号は大量生産され、増備が続く。いつしか、この高速列車は中国独自の技術であると喧伝されるようになり、他国への売り込みも始まった。ただ、当時の中国2社の売り上げはほぼすべてが中国国内で完結しており、海外への輸出は決して大きいものではなかった。

しかし、今後、国際競争力の強化を図り、輸出量を増やしたいと考えていた中国政府の肝いりで、2015年に中国南車が中国北車を吸収する形で合併、中国中車が誕生した。当時、すでに世界シェア1位と2位だった両社が一つになったことで、そのシェアは2位ボンバルディアの3倍以上になった。

中国が欧州に食指伸ばす

アルストム製の高速鉄道車両「ペンドリーノ」(筆者撮影)
ボンバルディア製の機関車「トラックス」(筆者撮影)

中国中車には多くの優秀な企業が本拠地を置く欧州へ、速やかに参入したいという野望があった。その手っ取り早い方法が、欧州に本拠地を構える企業の買収だ。

まず、英国の遠隔制御機器メーカーのSMDや、ゴム・プラスチック部品メーカーのZFといった中小部品メーカーを買収。標的はいよいよ、巨大なメーカーへと向けられた。車両やインフラなど多くの関連部署を有する、総合鉄道メーカーが多い欧州では、その1社を買収するだけで、欧州大陸進出の大きな足掛かりとなるからだ。

ボンバルディアは中国が買収を検討した1社だったが、この話は2015年に白紙となった。アンサルドブレダは、同社が身売りをする可能性が報じられてからずっと、身売り先リストの中に中国が名を連ねていたが、同社が選んだ相手は日立製作所だった。

同じく、買収候補企業として名前の挙がったシュタドラーは、CEO自ら「売却する意思がない」とコメントを残している。つい最近まで、かなり高い確率で買収がうわさされていたシュコダも、チェコの投資会社が同社を買収することで決着した。依然として同社は、欧州を拠点とする企業を買収することをあきらめていないが、決して多くの選択肢が残されているわけではない。

ビッグスリーの2社、シーメンスとアルストムが手を組むというニュースは世界に衝撃を与えたが、これこそが世界の鉄道車両メーカーの現状を如実に表している。21世紀初頭までは世界中に供給される車両の半数以上は、ビッグスリーから供給されていたはずなのに、今や中国中車に追い立てられ、各社とも青息吐息の状態だ。

残るボンバルディアが、この先どう舵を切っていくのかも気になる。再び中国との合併話が浮上しても不思議はない。あるいは合併相手はかつてのビッグスリーのライバルたちか、今でも車両製造でつながりのある日立製作所か……。この先の状況から目が離せない。

橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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