日経平均株価はGW明けに2万3000円回復も 「最悪のシナリオ」は徐々に回避されつつある

拡大
縮小

ところが、そうした外需系がリードする相場付きに、今年から変化が生じた。一般論として、ある一つの分野が、ずっと同じ水準の高い伸びを維持することは不可能だ。立ち上がり期には高い成長率を遂げることができても、ある程度の量に拡大すれば、その後は、伸び率は鈍化していく。日本からの輸出は、金額、数量両面で、足元は鈍化の様相を示している。

現在でも輸出企業の収益は堅調だが、株式市況は、輸出資本財企業の好収益を先取りして囃し、そうした実態面の良さは既に市場の知れ渡るところとなってしまった。このため、収益が減じなくても伸び悩みの様相を見せただけで、反落しがちとなる。特に安川電機が、最近では好決算を発表するたびに株価が下落したのは、そうした株式市場の織り込みの早さが背景にあったと言えよう。

「iPhoneX」が不振でも外需系の株価は持ち直しへ

これに米ドル円相場が1ドル=105円を割り込んだ局面では、円高懸念が輸出企業の重石となった。加えて、海外発の悪材料が乗ったことも指摘できる。それは、米アップルの「iPhoneX売れ行き不振観測」の広がりだ。特にその懸念の引き金を引いたのは、4月19日(木)に、台湾積体電路製造(TSMC)が、売り上げ見通しを下方修正したことで、これが半導体・スマホ部品関連株(東京エレクトロン、ローム、SUMCOなど)の株価を押し下げる結果となった。ごく直近では、ファナックが4月26日(木)にスマホ関連の設備投資の減速などを理由として、今期(2019年3月期)は減益になるとの見通しを発表し、翌同27日(金)の株価の大幅下落を引き起こしている。

マクロ経済面でも、日本からの輸出数量は、今年2月に前年比マイナスを記録した。その中心となったのは、中国向け輸出の落ち込みで、品目別には「半導体等電子部品」や「音響・映像機器の部分品」(液晶モジュールなど)が足を引っ張った形となっている。この背景には、中国におけるスマホ生産の減少があると推察される。

しかし、円高の一巡感が輸出企業全般の収益見通しに安堵感を広げ始めたことに加え、iPhoneXに対する懸念も、市場の悪材料としては、峠を越しつつあるように思われる。

直近でも述べたように、同懸念はファナック株の悪材料となったものの、同社の今期収益についての厳しい見通しの背景には、円相場の前提を1ドル=100円と辛めに見込んでいる面もあり、必ずしもスマホだけが悪材料というわけではない。このため、先週金曜日の「ファナックショック」は、全体相場には波及しなかった。

また、調整が続いていた半導体関連株については、株価が先行して底打ち、反発を見せてきている。その理由として、インターネット通信量の増加に対応するためのサーバー関連需要など、他の半導体の用途が増加する、という明るい面にも、市場の眼が向けられ始めたことが挙げられよう。

述べたように、輸出企業の収益が堅調であっても、増益率がどんどん加速するような状況ではなく、スマホ需要の鈍化も、スマホ本体や半導体、その他の部品・部材の生産設備関連企業を含めて、今後も繰り返し市況の重石となる恐れは残る。ただ、そうした外需企業の株価が全体相場のけん引役とならなくとも、最悪期は脱しつつあるように見込んでいる。

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