女性上司が女性に行う理不尽パワハラの恐怖

パワハラとして訴えたが「事実無根」とされた

「能力や実績を認められたんですね。景気が上向いているとはいえ、人件費を抑えて様子見をしている企業が多いなか、派遣から一気に正社員にキャリアアップできるケースは珍しかったと思うのですが」

「その通りですね。派遣での職務能力が認められるということも、あまりなかったと思いますし……。私の場合は、前の会社で総合職に転換するまで一般職で経理事務を担当していて、そのスキルや経験を生かせました。

もともと一般職では専門性が培われないし、出世もできないからと考えて、総合職に変わったのですが、実際には一般職でも頑張りようによってはしっかりと専門ノウハウを積み上げることができるのやと気づきました。特に正社員になってからは、与えられた仕事を指示通りに処理するだけではなくて、自分なりに判断して対応できる部分は、総合職の社員の補佐的な役目も進んで取り組むように努力してきたんですよ」

晩婚が変えた仕事観

44歳になった安川さんは、左手薬指に上品な一粒ダイヤの婚約指輪と結婚指輪を重ねづけしていた。まだ結婚してから日が浅いのだろうか。どのように切り出そうか、迷っていた、その時だった。指輪への視線に気づいたのか、安川さんが右手の指先を左手の指輪に愛しそうにあてながら、少し照れくさそうにこう話し出した。

「実は……去年、結婚したんです。派遣の仕事で落ち着いてきた時にはもう40歳間近になっていました。だから、もう自分はずっと独身なんかなあ、と思っていたんです。でも、ひょんなことから、いい出会いがありまして……」

正社員に登用されてから2年近く過ぎた頃、取引先との間で発注ミスが発生し、その処理に応援で借り出された彼女は、ともに職務にあたったことがきっかけで他部署の男性社員と急接近し、半年余りの交際を経てのスピード結婚となったという。

「しばらく前まで、自分が結婚、それも社内の男性と結ばれるなんて、想像すらしていませんでしたけど……家庭を持つことができて本当に良かったと思っています」

40歳代前半という年齢的なこともあり、さらに進めて子どものことを聞くのは気が引けた。安川さんの口から仕事も私生活も充実して暮らしていることを聞くことができ、どこかほっとした気持ちになり、今回はここで取材は終了しよう、と思った。ところが、彼女の表情がなぜか、曇り始めている。彼女も取材が終わりそうな雰囲気を察知し、まだ何か言い残していることがあるということなのだろうか。ここは直接、聞いてみるしかない。

「安川さん、少しご気分でも悪いですか?」

「…………」

「それか、失礼ですけど、まだ何か話し切れていないことがあるのでしょうか? せっかくの機会だから、話してみませんか?」

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