日本株が上昇に転じたといえる「重要な証拠」 「ダウ理論」で見ると2月や3月と様相が異なる

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相場では「出来高(もしくは売買代金)は株価に先行する」といわれている。ダウ理論で有名な米国のチャールズ・ダウ(1851~1902年)も常に株価の動きだけでなく、出来高にも注目していた。そのダウ理論では、いったん始まったトレンドは当面継続すると指摘しており、「転換シグナルが明確に現れるまではポジションを保有し続け、利益を拡大させることが大切だ」と唱えている。

さらに、ダウはトレンドの確認シグナルのひとつとして、「株価」と「出来高」の足並みが揃うことを挙げている。ダウ理論から基本法則を一部抜粋しよう。

ダウ理論の基本法則(※一部抜粋)
上げ相場→株価上昇時に出来高増加、株価下落時に出来高減少
下げ相場→株価上昇時に出来高減少、株価下落時に出来高増加

この法則は、あてはまるだろうか。
日経平均株価の上昇日と下落日における、東証1部売買代金(1日平均)をみていこう。

2018年2月 上昇日2.94兆円<下落日3.48兆円
 2018年3月 上昇日2.63兆円<下落日2.70兆円
 2018年4月 上昇日2.56兆円>下落日2.19兆円 ※4月10日時点

2月と3月は、日経平均の下落時のほうが、東証1部の売買代金は多かった。4月に入って、日経平均株価は戻り歩調を強めている。4月10日時点での売買代金をつぶさにみると、出来高は下落日よりも上昇日の方が増加している。これは、反騰(下落トレンドから上昇トレンド)を示唆するサインともいえるわけだ。もし、日本株の売買シェアの約7割を占める海外勢の買い戻し等が加速すれば、東証1部売買代金が連日3兆円台へ膨らんでくることもあるだろう。

日経平均は2万2300円~2万2900円までの戻りも

日本株は売り込まれたことで予想株価収益率(PER)が一時12倍台まで低下し、割安感も台頭している。3月の日銀短観によると、2018年度の大企業製造業の想定為替レートは1ドル=109円66銭。ドル安円高に振れたことから国内企業の収益鈍化懸念を警戒する場面も見られたが、足元のドル円は107円前後へと円安方向へ戻っている。

当面、日本株は円高に振れても日銀の下支え期待、仮にもう一段円安に振れれば海外勢の買いが勢いを増すことが想定される。テクニカル面では、日経平均株価の25日移動平均線(短期)が上向きに転じてきた。ただ、75日線(中期)は依然下向きで推移しており、上値では戻り売り圧力が強そうだ。もうしばらく「日柄調整」が必要かもしれない。最後に今後の重要な価格をあげておく。

日経平均株価のテクニカルポイント(4月10日時点)
2万4124円 2018年1月高値(年初来+5.97%)
2万2967円 3分の2戻し(2万4124円→2万0617円の下げ幅に対し)
2万2764円 2017年末値
2万2371円 半値戻し(2万4124円→2万0617円の下げ幅に対し)
2万2322円 75日線(中期)
2万1794円 4月10日終値(年初来では-4.26%)
2万1441円 25日線(短期線)
2万1386円 200日線(長期線)
2万0617円 2018年3月安値(年初来-9.43%)

以上のことを総合すると、4月の日本株は2万2300~2万2900円程度(いわゆる3分の2戻し)までの戻りもあるだろう。

中村 克彦 みずほ証券 シニアテクニカルアナリスト

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なかむら かつひこ / Katsuhiko Nakamura

IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、日本テクニカルアナリスト協会(NTAA)評議員。

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