混迷「リニア談合」、JR東海に責任はないのか ゼネコン4社が起訴されたが、どこかちぐはぐ

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価格と技術の二兎を追う入札制度自体に落とし穴があった。公正取引委員会の杉本和行委員長は「(各社の技術力や手繰りなど)事前に工事を割り振らざるを得ない事情があったとしても、価格競争をルールに設けた以上、受注者同士で価格を話し合うのは独禁法違反だ。初めから(特定のゼネコンと直接契約を結ぶ)随意契約なら問題はなかった」と説明する。

唯一、随意契約となっていたのが名古屋駅(中央東工区)だ。同工区ではJR東海の完全子会社がJV(企業共同体)代表を務め、サブに同社の17倍近い売上高の前田建設工業を従える。JV出資比率は規模順が「常識」。地元対策で有力者とパイプの太い企業をJVに加える場合も、その地元企業が代表を務めるのは極めてまれだ。

すべての情報をオープンにすべき

あるゼネコン関係者は「もともと名古屋駅は一つの工区として発注されていた。だがJR東海が急きょ入札を中止し、工区を2分割した」と打ち明ける。ほかの工区で繰り広げられた壮絶な価格競争を、なぜここだけ免れたのか。

一連の騒動を受けて、国交省からは「一般の公共入札と同様に、すべての情報をオープンにすべき」という声が上がる。だがJR東海は、価格が明らかになるとそれが相場となり「価格が下がらなくなる」(柘植康英会長)として、現状ではスタンスを変えていない。

他社も事件の行く末をかたずをのんで見守る。「他社との情報交換は営業活動の一環でよくあること。何が談合に当たるのかがわからなくなった」(準大手ゼネコン幹部)からだ。「国交省主催の勉強会ですら、他社が同席しても大丈夫かと法務部に問い合わせが来る」(中堅ゼネコン幹部)との声さえある。

起訴を受けて、各地の自治体では大成・鹿島を中心に指名停止の動きが広がる。今後のリニア工事についてJR東海は、「指名回避は司法判断が出るまで待つ」としているが、その前に自身の落ち度を点検すべきではないか。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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