混迷「リニア談合」、JR東海に責任はないのか ゼネコン4社が起訴されたが、どこかちぐはぐ

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やり玉に挙がるのは、JR東海が採用した入札方式だ。「公募競争見積方式」と呼ばれ、価格と施工技術の両面から受注者を決める。入札方式に関し同社は「価格を抑え、施工品質を確保しつつ機動的に契約を結べる」と説明する。

最低価格の業者が自動的に落札する一般競争入札とは異なり、受発注者間の交渉が絡むため選定プロセスが不透明になりやすい。ある国土交通省発注の工事では技術で4回、価格で8回もの交渉を重ねたうえ、交渉過程を専門の委員会が逐一チェックする徹底ぶりだ。

JR東海がそうしたチェック体制を敷いていたとは考えづらい。都心の大深部や南アルプスを掘削するリニアは難工事とされ、同社もそれを察してか、事前に地質調査やトンネル掘削の研究開発をゼネコンに依頼していた。「見積もりだけでも専門の職員を要するため数百万円はかかる」(ゼネコン幹部)。ゼネコン側も慈善事業として引き受けるはずはなく、延長線上にある工事の受注を暗黙の了解としていた。業界で「汗かきルール」と呼ばれる協力行為だ。

ルート公表前に大成が土地を取得

水面下での接触をにおわせる事実はほかにもある。神奈川県川崎市麻生区で工事中の東百合丘非常口。建設現場の不動産登記簿によれば、2012年3月に大成が購入した土地は、2014年にJR東海へと所有権が移っている。リニアの詳細ルートが公表されたのは2013年。なぜ公表前に大成が土地を入手し、その後JR東海に売り渡されたのか。受注調整の温床はこの時点で生まれていた。

実際の入札でも、土木工事の実績や年間の工事出来高を条件に据えた結果、「土木技術には自信があったが、JR東海が求める出来高に至らず入札できなかった」(中堅ゼネコン幹部)など、対象となるゼネコンが絞られるシステムだった。

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