電撃訪中の狙いは?米韓に広がる「嫌な予感」 「見返り」がなければ核放棄に応じない可能性

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儀仗兵の閲兵は人民大会堂内で行った(写真:ロイター)

金正恩氏は、人民大会堂で習主席と首脳会談を行っている。この時、ふつうは屋外で行う儀仗兵の閲兵を、大会堂内で行っている。正恩氏の訪中が、ひと目に触れないようにとの特別な配慮だったようだ。

筆者はかつて、北京で3回、金正日総書記の訪中を目の当たりにしたが、まるでその時の記録映像を見ているような錯覚に襲われた。

金正恩氏が乗った車列が通過する幹線道路に武装警察官が数メートルおきに並び、警備する方法。さらに「非公式訪問」として、訪中期間に、誰が来ているのか、中国政府は沈黙を守り、何も発表しないのも、そっくりだった。

驚くのは、この厚遇ぶりだけではない。首脳会談の合意内容だ。

「半島の非核化は解決可能」

この中に、北朝鮮の非核化について正恩氏は、「平和の実現のために段階的で同時並行的な措置が取られるなら、(朝鮮)半島の非核化は解決可能」と発言したという。

正恩氏が非核化の意思を初めて表明したのは、3月5日、平壌を訪問した韓国の特使に対してだった。この時、正恩氏は、非核化について「北朝鮮に対する軍事的な脅威が解消され、北朝鮮の体制安全が保障される」ことを条件として挙げていた。いわば、最終目的だ。

ところが、中国に対しては、焦点となっている非核化の「方法」を語っていた。

「段階的解決」というのは、過去に行われた北朝鮮の核問題をめぐる米朝協議などで、北朝鮮が好んで使ってきた用語であり、「過去25年間、北朝鮮が主張してきた方式」(韓国の有力紙「朝鮮日報」)。

要するに、核放棄に向かって少しずつ譲歩するが、米国や韓国から、それに見合った見返りが必要という意味だ。簡単には応じないという姿勢の表明でもある。

これでは、時間ばかりかかって非核化がなにも進まなかった過去の協議と何も変わらない。もちろん、中国もこの方法を支持しているのは間違いない。

これまでは、北朝鮮が国際社会からの制裁を受け、また米国が北朝鮮への武力攻撃も匂わせていることが効果を挙げてきたが、中国の「介入」で、北朝鮮は、国際的な孤立を脱却したように見える。

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