マツダのエンジンを他社がまねできない理由 「ロータリー」はトヨタの次世代EVに採用決定

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3月5日に広島市内で行われた山本健一元社長の「お別れの会」。自動車業界を中心に約1000人が参列した(記者撮影)

「人見は、すばらしい技術者。天才や」。3月5日に行われた山本氏の「お別れの会」で、感慨深そうに語ったのは現相談役の井巻久一元社長だ。人見光夫常務は、高効率エンジン「SKYACTIV(スカイアクティブ)」シリーズを世に送り出した立役者。マツダにとっては、ロータリーエンジンに次ぐ夢のエンジンで、米フォード・モーターからの独立後、マツダの回復を支えている技術だ。

ガソリンの自己着火を可能にした新世代エンジン「SKYACTIV-X」。マツダの技術が詰まっている(記者撮影)

人見常務はエンジン開発において、常識では不可能といわれていた「14」という圧縮比を実現。そして、昨年発表した次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X」では、圧縮着火技術を世界で初めて量産用で成功させた。平たくいうと、この技術では、ガソリンをディーゼルエンジンのように自己着火させることで、従来よりも少ないガソリン量で同じだけの出力を得られる。ガソリンエンジンの力強い走行を犠牲にすることなく、燃費性能の向上につなげている(「マツダが『革命エンジン』に込めた強い意地」)。

「飽くなき挑戦」は今も息づいているか?

人見常務は山本氏と直接仕事をした経験はないという。だが、「不可能といわれたことをかなえた」という、ロータリーエンジンの開発秘話と通じるところがあるのは単なる偶然だろうか。井巻氏は、「非常識といわれてもやりきる、そういう技術者を育てることが経営の役目。マツダにはそれを認める精神があり、連綿と受け継がれているものだ」と語る。

マツダが2017年の東京モーターショーで発表したハッチバックの「魁(かい)コンセプト」。この車に搭載された次世代技術「SKYACTIV-X」は、2019年から新型車への導入が始まる(撮影:風間仁一郎)

山本氏はマツダの技術者たちに「飽くなき挑戦」という言葉も残した。言葉そのものが語られることはなくても、マツダには逆境に負けない力を培う土壌がある。前出の小早川氏は「次世代ロータリーはこうありたい、こうあるべきだと模索されているものが出てくると思う」と期待を語る。不可能に挑戦する技術者の不断の努力を、後輩たちが受け継いでいく。その精神こそがマツダの財産だ。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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