非正規労働者に欠けているものとは何なのか

PTA・自治会などの社会活動をするべき理由

藤井氏は統計学や労働政策を学び、京都大学公共政策大学院修士(MPP)を取得した。(写真:藤井哲也氏提供)

藤井氏は、「1993年から2005年の間に就職活動をしていた就職氷河期世代は未だに取り残されている。30歳までは比較的キャリアチェンジがしやすいが、就職氷河期世代はその年代をとうに越え、今も生活が困窮している人が多い。この点をなんとかしたいと思い研究を始めたのです」と語る。

また、「仮に、非正規労働者であっても、正規労働者に準じる所得水準を得られたり、正規労働者並みの能力開発の機会に恵まれる見通しがあれば、問題はないが、勤務先の企業で受けるOJTを含めた教育訓練機会を正規労働者と非正規労働者で比較すると、非正規労働者の方が、機会が少なく、また新卒就職の時点で正社員でない場合、その後なかなか正社員になりづらい」とも語った。

いわゆる、ビジネススキルを培う機会が与えられない非正規社員は、給与の差以上に、スキルの差が開き、再就職が困難になっている。さらに就職氷河期世代は、困窮したまま子育ての年代(40代)を越えてしまった。それは少子化が進む社会にとって非常に大きな問題になっているのだ。

自治会やPTA活動が実践知をあげる

藤井氏の調査研究によれば、仕事以外でもビジネススキルを高めることができることがわかった。

それは自治会やPTAなどの社会活動だという。同氏の調査研究では、「現職が正規労働者である260名と、契約社員・派遣社員355名の合計615名」から回答を得た。そのアンケートをもとにハーバード大学のカッツ教授が提唱したモデルにあてはめて、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルにかかわる実践知を分析した。

ハーバード大学教授のロバート・カッツ氏が提唱したモデル
・テクニカルスキル:業務遂行能力。仕事を遂行する上で必要な専門スキル
・コンセプチュアルスキル:概念化能力。状況を分析し問題解決に必要なスキル
・ヒューマンスキル:対人関係能力。人間関係の形成に必要なスキル

その結果、正規労働者としての経験は、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキルの実践知が結びつくことがわかった。それに反して非正規労働者としての経験は、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキル、すべての実践知獲得につながっていなかった。

この結果は先述したが、非正規労働者はOJTを含めた教育訓練を受ける機会がないという結果を如実に表した。

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