ついに日本上陸!中国「EV電池」の忍び寄る影 パナソニックを抜いた超新星「CATL」の正体
CATLは会社の設立以降、中国地場の自動車メーカーを開拓し、急激に規模を拡大してきた。中国のEV・プラグインハイブリッド(PHV)販売台数はここ数年、年率50%超の高い成長が続き、2017年は世界最多の77.7万台に達した。これを受け、CATLも2017年は連結売上高199億元(約3360億円)、純利益42億元(約720億円)に急成長した。
ただ、中国では2021年にかけて、EVの購入補助金が徐々に廃止されるもようだ。補助金がなければ、航続距離が短く充電に時間のかかるEVを消費者があえて購入する理由は乏しく、市場拡大が一服するおそれがある。実際、CATLの工場稼働率も2016年の9割超から、2017年には7割まで低下している。
そこでCATLが乗り出したのが、中国市場を狙う外資系自動車メーカーの開拓というわけだ。
独BMWと中国で親密な関係を築いた
目下注力しているのが、欧州メーカーだ。中でも独BMWとの関係は深い。同社とは2012年から戦略的パートナーシップを結び、中国専用車の電池開発で協業してきた。2016年発売の中国専用PHV(プラグインハイブリッド)「X1」などには、CATLの電池が搭載されている。
今後は、仏PSA(旧プジョーシトロエン)や独フォルクスワーゲン(VW)などにも車載電池を供給する。特に事業拡大が期待されるのはVWである。同社は2025年までに世界で500億ユーロ(約6.5兆円)を超える電池を調達すると宣言しており、巨額の購買計画の中にCATLの車載電池も含まれている。
外資系自動車メーカーがCATLの電池の採用をこぞって検討する背景には、中国政府の政策がある。自動車メーカーが補助金を受けるためには、中国政府が推奨する電池メーカーの一覧表、通称「ホワイトリスト」に登録されている企業から電池を調達することが、暗黙の条件といわれている。
CATLはこのホワイトリスト入りしている一方、パナソニックや韓国のサムスンSDI、LG化学などの外資系電池メーカーは名前の記載がない。調査会社テクノ・システム・リサーチの藤田光貴シニアアナリストは「中国では2019年度から一定割合の電動車販売を義務付けるNEV(新エネルギー車)規制が始まるため、自動車メーカーは対応を急いでいる。性能や規模を考慮すると、当面はCATLを採用する選択肢しかない」と見る。
自動車メーカー側に不安がないわけではない。車載電池は人命にもかかわるうえ、日本では中国製品に対する「安かろう悪かろう」のイメージが根強い。CATL幹部は、「日系自動車メーカーと戦略的にパートナーシップを結ぶなどして、CATLが日本視点での品質意識を取り込むことが不可欠だ」と言う。