着工30年「小田急複々線」はこうして完成した 昭和にスタート、平成をほぼ費やして開通

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バーナーでレールを切断する様子(撮影:梅谷秀司)
中央に見える門型の機械が「レール山越器」。これでレールを吊り上げ水平移動させる(撮影:梅谷秀司)

終電が通過してから約30分後、1時40分過ぎにはレールの切断と移設がスタート。つい先ほどまで電車が走っていたレールはバーナーによってあっという間に切断され、レールを吊り上げて水平移動させる「レール山越器(やまこしき)」と呼ばれる道具によって1本10分ほどで移設が完了してしまった。

線路の移設は2本のレールに枕木が付いた状態のまま、大勢の作業員がバールなどを使って移動させる例が多いが、今回の場所はポイントに近い部分のため1本ずつ移設したという。

作業はスピーディーに進み、2時過ぎには線路の切り替えにともなって位置が変わる信号機の撤去も完了。上りホーム上に吊り下げられていた大きな信号機が取り外され、大がかりな作業のほとんどは2時半前にはほぼ終わった。小田急線の始発電車は梅ヶ丘駅の2つ隣にある経堂駅を4時48分に出発するため、一見すると余裕をもって作業が進められたようにも見える。

70トンの仮ホームを2時間で撤去

だが、実際に作業ができる時間は短い。「始発に備えて4時までにはすべての作業を終わらせないといけないので、土木工事が可能なのは3時半ごろまで。実質2時間です」と小田急電鉄複々線建設部の宮原賢一課長。このため、限られた時間内で確実に工事を終えるための手順を事前に整えてきたという。

東北沢駅で行われた仮設ホームの撤去作業(提供:小田急電鉄)

中でも特に入念な準備が行われたのは、「この日一番大がかりな作業」(宮原課長)だったという東北沢駅での工事だ。同駅は外側に急行線、内側に緩行線が通る構造で、ホームは緩行線に挟まれた「島式」だが、今回の工事が完成するまでは緩行線の線路を覆う形で仮のホームを設けていた。

全長165mにわたるホームの両側に設置した仮設ホームの資材は、重さにして合計約70トン。作業は約200人を動員し、撤去した資材運搬用の「軌陸車」を16台投入して作業を行ったが、これを限られた時間内で確実に行えるよう、仮設ホームを模した施設を地上につくって数回のシミュレーションを行い、解体作業の進め方などの検証を進めていたという。

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