着工30年「小田急複々線」はこうして完成した 昭和にスタート、平成をほぼ費やして開通

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最後の区間となったのは、高架化されたほかの区間と異なり地下式となった世田谷代田―東北沢間の1.6kmだ。同区間は2013年3月に従来の2本の線路をまず地下化。この線路を使いながらもう2本の線路を通すためのトンネル掘削を進め、昨年11月までにトンネル・線路を含めた工事がほぼ完成した。そしてこの3月3日、新しい2本の線路をすでに完成した区間とつなぐ工事を行い、ついに全区間の複々線化が完成した。

線路の切り替えは一晩で

3月3日午前1時過ぎ。世田谷代田駅に隣接する梅ヶ丘駅の高架ホーム上では、終電の発車後すぐに始まる線路の切り替え工事に備え、約200人の作業員が準備を始めていた。

上りの最終電車。外側の線路から中央にある線路に合流していく様子がわかる(撮影:梅谷秀司)

この日同駅の構内で行われたのは、東北沢―世田谷代田間に新たに完成した各駅停車用の線路「緩行線」を、すでに完成している梅ヶ丘駅までの緩行線につなぐ工事。和泉多摩川―梅ヶ丘駅間の複々線は、外側の2本が上下の緩行線、内側の2本が急行や特急の走る「急行線」だが、東北沢―世田谷代田間はこれまで急行線にあたる2本の線路しかなかったため、梅ヶ丘駅の構内にある分岐(ポイント)で緩行線を急行線に合流させる形となっていた。これを切り離し、既存の区間と新たに完成した区間の緩行線同士を接続するわけだ。

上り線は昨年のうちに線路を接続する作業が済んでいたため、この日特に大がかりな工事となったのは下り線側。これまで急行線につながっていた既存の緩行線の線路を切断し、約63mにわたって移動させたうえで、新たに完成した緩行線につなぎ変えるという作業だ。

下りの最終電車が出発後、線路の移設作業へと取り掛かる作業員ら(撮影:梅谷秀司)

午前1時07分に下りの最終電車が発車してしばらくすると、ホーム上で待機していた大勢の作業員が線路内へと降り、下り線の線路周辺にある袋を次々と撤去し始めた。袋の中身は、線路に敷かれているバラスト(砂利)。線路を移設する際、その場で砂利をかき集めたりすることなくスムーズに作業を進めるための工夫だ。その約5m上では、はしごに昇った作業員が架線の切り替え作業をほぼ同時進行で進めていく。

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