テスラCEOが全社員に宛てたメールの中身 イーロン・マスクに学ぶ、良い独裁と悪い独裁

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このスタイルでは、全社を挙げて取り組む総力戦などはすでにありません。数多くの局地戦を奇襲で戦いつつ、負けそうになるとあっさり降伏する一方、勝てる戦闘では戦果を最大限に拡大するスタイルです。

場の設定 → 試作競争 → 選択 → 投資

という形です。これまで教科書で習った、

企画 → 開発 → 製造 → 営業

の流れとは根本的に異なり、本社の企画関係のサラリーマンの仕事はほとんどなくなります。基本的な組織のあり方、働き方として、GEに限らず、今後はこういった働き方が主流になっていくでしょう。

GEはもともと発電所やエンジンなど重厚長大の会社だったのが、ここまで変えてきている。以前と戦い方も組織もがらりと変える。それには社内の抵抗を排除し、強力な権力者が自分のコンセプトの実現のために権力行使をしないといけません。

日本でなぜ浸透しないのか

ところで、先日、GEの競争相手にあたる日本企業の人(人事部の偉い人)と話をしたときに、日本ではこんなことは到底無理、と言っていました。なぜかと聞いたところ、「やろうとしても、中間管理職が言うことを聞かないでしょう」ということでした。

『新・君主論 AI時代のビジネスリーダーの条件』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ドラスティックな変化を好んで受け入れる人はいません。人間の本性や組織の慣性に逆らい、変化を権力の行使で可能にする力が独裁力です。

普通の人間は、誰しも不安定な状況が続くのは耐えられないので、ドラスティックな変化に拒否反応を示します。安全ゾーンを作って自分の居心地を良くしようとします。イーロン・マスクのような異次元人でもない限り、自分の居心地を良くしたいというのが人間の性ともいえるものでしょう。

みなが自分の居心地を良くしたい、だけでは、組織は老いて沈滞します。自らが持つコンセプトの実現のために、人間の性に逆らい邁進する強い権力を持つリーダーシップが必要になるのです。これは「良い独裁力」と言えるでしょう。

木谷 哲夫 京都大学産官学連携本部IMS寄付研究部門教授

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きたに てつお / Tetsuo Kitani

マッキンゼーに10年間在籍、メリルリンチ・キャピタルマーケット(NY)、日本興業銀行、アリックス・パートナーズを経て2007年より現職。起業家教育を担当。龍谷大学客員教授。東京大学法学部、シカゴ大学大学院、ペンシルバニア大学ウォートンスクール卒。京都大学技術イノベーション事業化コースで講師も務める。

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