テスラCEOが全社員に宛てたメールの中身 イーロン・マスクに学ぶ、良い独裁と悪い独裁

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GE前CEOのイメルト氏は、2015年の来日時に富士フイルムホールディングスの 古森重隆会長兼CEOらとパネルディスカッションを行っています。

そこで、古森氏の「時間をかけて製品化しても顧客のニーズとずれてしまう」という意見に呼応し、「時間をかけて100%を目指すよりも、いち早く上市し修正を重ねる方が、結果的に顧客の利益にかなう。大事なことは、可能な限り素早く上市し、失敗するならなるべく早く失敗し、機敏に方向転換することです」と言っています。

シリコンバレーで浸透している仕事のやり方は、顧客との接点を最重要視するものです。従来のメーカーだと、通常6か月~1年かけて製品を開発し、品質面、耐久性等の試験を経たあとで、マーケティング・販売部門に初めて案件が移り、顧客と接触するのが普通でしたが、それではすでに巨額の開発資金を投じたあととなり、方向転換すると大きな損失が出てしまいます。ひどい場合には方向転換はあきらめ、玉砕を半ば覚悟しつつ量産・販売開始し、製品はできたが顧客はいない、というリスクを抱えることになります。

SV流「ファストワークス」という考え方

これに対し、シリコンバレーで浸透しているファストワークスでは、そもそも製品ができあがる前から顧客の声を聞くことが最重要視されます。できるだけ早く顧客からのフィードバックを得て方向転換するので、失敗するのは早くなります。そして、最後まで方向転換を繰り返すことで、最終的には確実に顧客に支持され売れる製品を市場投入することができるようになります。

GEはこの方式を具体的に組織に落とし込むために、組織・仕事のやり方を変えました。従来の製品開発プロセスでは、必要な人員や予算は案件の承認と同時に大きく割り当てられていました。それをやめて、少額から投資を始め、マイルストーンを達成するごとに次の段階に必要なリソースを投入していく、リーン・スタートアップの方式にしたのです。

開発の早い段階で顧客ニーズを検証し、見込みのある解決策はすぐに試すことで、コストを抑えられます。このため、同じ予算でも複数のプロジェクトを同時並行に走らせることができ、トライアルと実験を経て有望プロジェクトに絞り込み、そこで初めて本格的に資源を投入することになります。

これは、VC(ベンチャーキャピタル)のやり方と同じです。GEが試行しているのはいわば本社機能のベンチャーキャピタル化であり、社内には数多くの疑似スタートアップ企業がひしめき合い、成功しそうなスタートアップだけに投資を集中する、という新しいコンセプトの会社となったのです。

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