21世紀の「日米貿易戦争」で勝つのはどちらか 日本が国際貿易における新たなリーダーに?

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今年1月ダボスで開かれた「世界経済フォーラム」の演説で、トランプ大統領が「よりよい条件で交渉できるなら、TPPに加盟できるかもしれない」という趣旨の発言を突然した時には、日本の計算が正当化されるのでは、という兆しもあった。

この発言には、大統領顧問でさえ驚いたが、最近の鉄鋼・アルミニウム輸入関税への動きではっきりしたように、トランプ政権の貿易政策において1つだけ確かなものは、混沌だ。著者が話を聞いた専門家の全員が、米国がTPPに再加盟する動きは今や大変難しくなっている、と考えている。

今の米政権と交渉したい国などない

「トランプ政権のTPP11に関する予備交渉は決して説得性のあるものではなかった」と、ソリス氏は話す。

「トランプ政権は、米国にとって『よりよい条件』を要求しているのだが、貿易協定によって商品の貿易赤字を減らそうという試みを優先させる見当違いなやり方、さらに既存や交渉済みの貿易協定を使い捨てのように扱うやり方を考えると、こんな政権と交渉したいという国がどこにあるだろうか。おそらくないだろう」

日本の政府関係者もこの見方に同意する。「トランプ政権からTPPに対する真剣さは感じ取れない」と、梅本氏。「米国がTPPに変更を加えようとした場合、それは事実上非常に困難で時間がかかる交渉となるだろう。そのような交渉に臨みたいと考える国はないと言っていい」。

「トランプ政権が、TPPに真剣に再加盟しようとする可能性は低い」と、プレストウィッツ氏も同意する。「現在、農業関係者は積極的に働きかけている。日本市場では、オーストラリアやカナダにシェアを奪われつつある、と感じているからだ。

しかし、米自動車大手のフォードやクライスラー、UAW(全米自動車労働者組合)は最初からTPPなど望んでいなかった、ということを忘れてはいけない。輸入車、特に日本製トラックに対する関税を引き下げることになるからだ。米国の農産物輸出による利益は、日本から米国への自動車輸入の潜在的な増加の価値にはるかに及ばない。米国のほかの産業も、TPPがベトナムを本質的にもう一つの中国へと変えてしまうのではと恐れている。ベトナムから米国への輸出が爆発的に増えるのでは、と」

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