JALが明かした「世界500都市就航計画」の内実 2019年度、米国西海岸4つ目の都市に就航へ
では、10年後の数値目標をどのように達成するのか。最も重要な柱となるのが、路線ネットワークの拡大だ。今回JALが明らかにした計画では、自社便と提携航空会社との共同運航便などを合わせて世界500都市に就航を目指す。現在は344都市(うちJAL便が90、提携航空会社が253)であり、約1.5倍に増やすことになる。
目標の「500都市」について、経営企画本部長の西尾忠男・常務執行役員は、「あくまで日本からの渡航者が訪れる都市の上位をカバーしていくイメージ」と明かす。明確な意図があって積み上げた数字でなくとも、方向性は示していく。これも植木社長が口にした「コミュニケーション」の1つといえる。
加えて国際線収入における海外販売比率を、現在の30%強から今後10年で50%まで引き上げるという。西尾常務は、「アジアから北米への流動がいちばん成長が大きい」と説明し、成田や羽田で乗り継ぐ旅客需要を取り込むのが狙いだ。
そのために展開した施策が3つある。一つ目は昨年11月に実施した旅客基幹システムの全面刷新だ。これまで海外客がウェブ上で航空券を予約した場合、変更や払い戻しの手続きが複雑だったが、こうした部分が改善された。2つ目がアジア路線でもビジネスクラスシートのフルフラット化。そして3つ目が成田・羽田のラウンジの改修だ。「3つのサービスを有機的に使いながら、販売を伸ばしていきたい」(西尾常務)。
次なる就航先は、米国シアトルか
国際線の具体的な新規路線計画については、今回1つだけ示された。2018年度は今のところ予定はなく、2019年度に「北米西海岸の新規地点」への就航を予定する。現時点でこれ以上の開示はない。だが、重要な手掛かりがある。
現在JALが就航している北米西海岸の都市は、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴの3つ。これら以外で渡航需要が見込めそうな大都市は、シアトルだ。しかも2016年にJALが提携した米アラスカ航空は、ここに本拠地を置いている。同社はシアトルから全米89都市に毎日290便以上を運航する。シアトル発着便で共同運航すれば、米国のネットワークは格段に広がるわけだ。
成田―シアトル線を2012年から運航している全日本空輸(ANA)と真っ向勝負になるが、提携パートナーがいるかいないかでは大きな差がある。しかもシアトルは日本からの飛行時間がちょうど9時間ほどで、米国の中では最も短い。他都市へ乗り継ぐには効率のよいルートといえる。
路線ネットワーク拡大で成長に意欲を見せるJAL。だが、中期経営計画の最終年度である2020年度の収益目標は売上高1兆6000億円、営業利益1800億円と、昨年発表した計画からは売上高を1000億円引き上げたのみ。燃油価格の上昇を織り込んだことにより、むしろ営業利益率は悪化した。開示の範囲は広げたが、目標を引き上げたわけではない。今後も株式市場とのコミュニケーションには、注目が集まりそうだ。
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