韓国GM工場閉鎖で文政権は失速しかねない 救済すると多くの国民が反発するため困難
文氏は昨年、雇用創出を公約に掲げて大統領選に勝利した。その後まもなくして、公的部門において数十万人の雇用を生むために約11兆ウォン(約1兆円)規模の補正予算案を編成した。
しかし汚職スキャンダルが一部の韓国大手企業を揺るがす中、文大統領は政府と企業との親密すぎる関係にメスを入れる改革も約束している。
これまでの民間部門への政府による介入も、必ずしも成功してきたとは言い難い。
政府は2015年以降、造船大手の大宇造船海洋<042660.KS>に7.1兆ウォン超の公的資金を注入。1企業に対する救済としては過去10年以上で最大となる同措置にもかかわらず、韓国の造船セクターは依然低迷し続けている。
組合と失業
大統領府は今週、GMが工場を閉鎖しようとしている群山市を、影響を受ける労働者が経済支援を受けられる「雇用危機地域」に指定することを明らかにした。
GMは韓国にいる全従業員約1万6000人に対し、依願退職プログラムの提供を始めた。
また、GMが韓国から完全撤退した場合、同社のサプライチェーンにもその衝撃は波及し、国内に14万人いるサプライヤーや下請け業者もリスクにさらされる恐れがある。
「文在寅大統領がこの問題を適切に解決することができなければ、雪だるま式に悪化して、もっと大きな問題となって大統領自身に跳ね返ってくるだろう」。閉鎖が検討されているGMの富平(プピョン)工場で7年働くベテラン従業員のLee Young-suさんはこう話す。「文在寅政権は、雇用を創出するのと同じくらい、雇用を守るべきだ」
厳しい労働市場に苦しむ韓国人から「貴族」と揶揄(やゆ)されがちな大企業の労働組合のために雇用を救済することに、国民が同情的でないことも問題を複雑にしている。
多くの若者は、そのような労働組合について、年配の労働者が子どもの大学費用や車の購入費を賄えるよう寛大な条件を守るための団体と見ている。