「石垣空港」急成長に航空各社が喜べないワケ 喫緊の課題は「ターミナル」の改善だ

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ラウンジの開設が喫緊の課題(筆者撮影)

石垣島を訪れる観光客には、島にも宿泊や観光、食事などでお金を多く落としてくれるリピーター客が多い。空港ターミナルが混雑している時間帯に利用する羽田直行便のリピーター客から出るクレームの中で最も多く聞かれるのが、「出発前に利用できるラウンジがない」という声だ。

空港には航空会社の上級クラスや多頻度会員が利用できるラウンジだけじゃなく、クレジット会員向けのカードラウンジすらない。

航空会社にとっても悩ましい問題

空港ターミナルビル運営会社に話を聞くと「ターミナルの拡張へ向けた検討をしている。ラウンジの開設も検討課題にはあるが、まだ具体的に作る予定はない」と話す。

各航空会社もラウンジ開設を要望しているが、ANAの菅石垣支店長は現在の状況について「優先チェックイン、保安検査場の改善は、お客様からご意見をいただくことが多い。せっかく八重山を楽しんでいただいた後、帰るときに空港が混雑している様子はしのびないと思っている。特に座席数が多い羽田行きの便の出発前は、ゲート前の待合室の椅子に座れないくらい人が溢れており、上級会員やプレミアムクラス利用者に立ってお待ちいただくこともある。我々もラウンジを作って欲しいことを関係機関にも要望している」と話す。

混雑や行列、ラウンジ不足などの問題を早急に解決しないと、せっかく増えた利用客を減らしかねない。スペースを持て余し、利用客が伸び悩む地方空港が多い中では贅沢な悩みである。

日本最南端のスターバックスをはじめとしたフードエリアやお土産店などは充実しており、利用者の評価も上々だが、新空港開港5年を迎える今、旅客増に対応した施策を講じることを真剣に考えていかなければならないだろう。

鳥海 高太朗 航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

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とりうみ こうたろう / Kotaro Toriumi

1978年千葉県生まれ。成城大学経済学部経営学科卒。食品会社、コンサルタント、城西国際大学観光学部助手を経て現職。専門は航空会社のマーケティング戦略。利用者・専門家の双方の視点から各社メディアを通じて情報発信をしている。

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