オリンパス、社員弁護士が会社を訴えた理由 中国での贈賄疑惑に端を発した異例の訴訟
安遠はいわくつきの会社だ。同社を経営する陳族遠氏は、2007年の雲南省交通庁贈収賄事件をはじめ、昆明市の城市建設投資公司、さらには2014年に発覚した広州市トップの汚職事件でも贈賄側として関与が報じられた。
2011年にOSZと消防局との間でトラブルがあった際、安遠が仲介役となり問題を解決。見返りに安遠は傘下の安平泰を通じ、OSZから食堂運営や清掃、警備業務を次々受託した。
OSZは税関との問題についても、安遠グループに協力を要請。制裁を回避・軽減できた暁には安平泰に報酬を支払い、社員寮2棟も譲渡する内容のコンサルティング契約を結んだ。そして2014年夏、深圳税関は「罰金なし」の判断を下し、OSZは約4億円もの報酬を安平泰に支払った。
「罰金制裁を免れるため、安平泰が深圳税関に賄賂を渡した可能性がある」。その後、本社の監査役に内部通報があり、社内調査委員会が発足。委員会からの依頼を受けた西村あさひ法律事務所などが調査報告書を作成した。
最終報告書は「贈賄の認定には至らず」
2015年秋に委員会へ提出されたその最終報告書は、安平泰とコンサル契約を交わす際、OSZで数多くのコンプライアンス違反が行われた事実に言及。また、契約にかかわった幹部の贈賄リスクを認識していたとする供述や、安平泰の素性を含め契約に関する報告が笹宏行社長はじめ本社経営陣に上がっていたことにも触れている。
しかし、安平泰が税関に賄賂を渡した証拠がないとして、結論は“シロ判定”。「安平泰が贈賄を行った疑惑は完全には払拭できないが、贈賄関連法令に違反する行為があったとの認定には至らなかった」と最終報告書は締めくくっている。
これに納得しない社内関係者がいた。その一人が、アジア統括会社の法務担当幹部だったB氏だ。B氏の指揮の下、同法務部はOSZ案件の法令違反リスクを再検証するため、2017年に三つの外資系法律事務所から意見書を得た。