築地市場、約100年前もあった移転騒動の深層

日本橋、築地、豊洲…「東京の魚河岸」の変遷

その後も首都圏の人口増加や冷凍・加工技術の革新を追い風に、名実共に東京の「胃袋」を支える存在となった築地市場。今年の10月をもって3度目の移転となる東京の魚河岸だが、市場関係者からは移転に伴い存在感が薄れるのでは、という懸念も上がる。だが、問題は築地か豊洲かだけではない。卸売市場そのものが岐路に立たされている。

「自分が築地市場に入った1980年代と比べて、今の築地はずいぶん暇そうに見える」。卸売会社の東都水産にて鮮魚の卸売りに携わり、現在は外国人向けの築地市場ツアーを行う中村直人さんは語る。

築地と取引のあった卸売会社も、近海1課・2課・関西・遠海など魚種によって細かく分類されていた部門を鮮魚部門に一本化した。中村さんが買い付けに携わっていたサケも、1990年代後半に競りが行われなくなったという。

問われる卸売市場の役割

築地市場での水産物の取扱量はこの15年間で約63万トンから約38万トンへと4割も減少し、毎年過去最低を更新し続けている。ピーク時の約80万トン(1989年)と比較すると半分以下にまで落ち込んだ。

国内の魚介類消費量が減っていることに加えて、卸売市場を通さない取引が増えているためだ。スーパーマーケットなどが産地から直接買い付けたり、海外から直輸入したりする「市場外取引」が増加した結果、卸売市場を経由する水産物の割合は平成に入って2割以上減少している。

「卸売市場離れ」を受けて、市場同士の統廃合も進む。「再編に取り組むものとすること」――。農林水産省が2004年に打ち出した「第8次卸売市場整備基本方針」の文言が、市場関係者の目を引いた。

取扱数量が減少していたり、赤字が続いていたりする中央卸売市場には統廃合を促した。以来、せきを切ったように中央卸売市場は地方卸売市場への転換や統廃合を進め、農水省の方針発表から2016年までに22カ所もの中央卸売市場が姿を消した。

神奈川県川崎市は、市内に北部と南部の2つの中央卸売市場を抱えていたが、農水省の方針を受けて、2007年に南部市場を地方卸売市場に転換した。「両市場とも取扱高が減少しており、効率化を図るために南部を地域密着型の市場と位置づけた」(川崎市中央卸売市場)。2014年には南部市場の運営を民間に委託し、経費削減も進める。

栃木県足利市でも、市営の卸売市場が今年1月から民営化された。取扱高はピーク時の3割にまで落ち込み、市が毎年赤字を補填する状況が続いていた。卸売市場の規模を縮小し、新たに商業施設を誘致することで収益化を目指す。

築地市場の取扱高は依然として全国トップだが、減少傾向に歯止めがかからない。築地か豊洲かという場所も気になるが、ますます小食になった胃袋はどこへ向かうのか。

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