TGV遅延で仏国鉄トップの「神対応」が話題に 車内の乗客に自ら謝罪、異例の「逆走」も指示
ペピ社長のトラブル対応で、とりわけすばらしいと称賛されているのが、その危機回避の瞬時の判断力である。
事故は約30km前方で発生し、列車は13時35分ごろ緊急停止した。高速線は複線区間だが、対向する線路も不通となり、前進できなかった。そこで、ペピ社長はリール方向に引き返す選択をとった。高速線と在来線の分岐点まで戻り、そこから在来線を走行し、パリに向かったのだ。結果、定刻から約1時間遅れでパリ北駅まで無事に乗客を輸送することができた。被害は最小限にとどめられた。
列車が逆走を始めた時も、ペピ社長はマイクも使うことなく、「このままでは、2、3時間も高速線にとどまることになる。より賢い選択として、アラスにある分岐点まで戻り、在来線を走り、パリに向かう」と説明して歩いた。
もちろん、社長がすべてをひとりで決断し、危機回避の命令を下したわけではない。だが、高速線にとどまるか在来線を進むかの選択で、どちらが最適かは車中の社長本人こそが、もっともよく把握できた。そして、フランスは高速線も在来線も同じ1435mm軌間で敷かれ、緊急時には高速列車も在来線で運行できる臨機応変なオペレーションも称賛に値する。
ユーロスターが起こした人身事故は、事故後、約800mも線路を清掃しなければならないほどの大惨事だった。それを考えれば、約20本の高速列車が2~3時間の遅延で済んだ事実から、ペピ社長のリーダーシップと英断により、被害を最小限に抑えたとの評価が適切だろう。
ペピ社長は謝罪せざるを得なかった?
SNCFに対し、ネガティブな視線でこの一件を見るとすれば、ペピ社長は、どうしてもこの行動をとらざるを得なかったとも言える。
というのも、2017年末、パリのターミナル駅で連続して電気系統の故障が発生し、列車が運休になる事態があった。12月3日にモンパルナス駅、同26日にサン・ラザール駅。しかも、サン・ラザール駅は朝9時40分に故障し、運行再開が昼12時15分という、フランスではクリスマスからの年末休暇が始まった時期と重なり、影響が大きすぎた。
連続した不祥事の原因説明のため、1月8日にペピ社長は運輸担当大臣エリザベット・ボルヌ氏から、“異例”の呼び出しを受けている。SNCFの広報担当も、この事実を認め、以下のように説明する。
「年末の連続した故障以来、何かトラブルが発生すれば、社長のペピも乗客に対し、早急に対処する義務があった」
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