フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない

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――「教師なし」の機械学習はどのくらい研究が進んできたのでしょうか。

まだ始まったばかりで、最適な解決策の糸口を探している段階だ。その中で一つ、私たちが進めているのが、子ども、乳幼児を生物学的に深く研究し、そこからインスピレーションを得ようという試み。彼らの学び方を観察して、それを機械の学び方に生かせないかという考え方だ。

子どもは本当にすごい。1日10時間起きているとすれば、そのうち95%は「教師なし学習」の時間。つまり、「これはペンだよ」「これはリンゴだよ」と教え込む作業をしていないにもかかわらず、自分で見て、聞いて、遊んで、探検して、学んでいる。ほんの少量のデータで、一気に賢くなる。われわれの最先端のAIよりはるかに頭がいい。

会社が違っても研究コミュニティは一緒

――子どもの学び方にヒントを得ようとするのは、AI研究の共通的なアプローチなのでしょうか。

研究者のコミュニティはある種の”家族”のようなもので、所属がフェイスブックだろうがグーグルだろうがIBMだろうが、あまり関係がない。皆が同じカンファレンスに出て、とてもオープンな環境で研究しており、この会社だからこの方向性、というものもない。自由度の高い、ボトムアップの世界だ。

すぐに自社のビジネスに結びつかないようなAIの基礎研究もフェイスブック社内では進められている(写真:Facebook)

私自身が所属しているAI研究チームも、もっぱら学術的な研究開発を行い、すべての活動をオープンにしている。私たちの第一の目的はフェイスブックの事業を助けることではなく、あくまで最先端のAI技術を追い求めることだ。もちろん、それが時としてフェイスブックのビジネスに直接役立つことはあるが。

特に教師なし学習の研究は、これから非常に長期戦になるだろう。10年間研究し続けても結果が出るかわからないというレベル。そういう類の研究に投資し続けられる企業はあまり多くないが、長期的かつ抽象的な研究が科学の発展のためには重要だ。

――最近では音声アシスタントやスマートスピーカーが盛り上がっていますが、非ディスプレー型製品が普及した先に、フェイスブックはどのような姿になっているでしょう?

構図として、(テキストや写真などの)ビジュアルに相対する概念としての音声、という形にはならず、相互補完的になっていくのではないか。たとえば、オープンスペースで仕事をしているときや、すごく複雑で体系的な情報を取得しようとしているときには、テキストや写真、表などのほうが適している。でも運転中や料理の途中にちょっとしたニュースを聞くときなら、音声のほうがいい。どちらか一方ではなく、組み合わせて使うことで便利さが増していく。

その流れの中で、フェイスブックをはじめとするSNSの使い方に何らか変化が生じてくるのは明らか。スクリーンを見て使う、というだけではなく、聴覚的な情報や付加価値がより重要度を増す可能性はある。一方で、友達と楽しい出来事をシェアしたり、一緒に何かを体感したりといったコンセプトは変わらないはずだ。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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