ジュエリー勝ち組「4℃」が下方修正した真因 クリスマス商戦は、なぜ不振だったのか

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手っ取り早く、ネットで商品を買う顧客も増えている。

ジュエリーの場合、高額品のネット販売は少ないが、2015年ごろからは低価格品を中心にヤフオク!やメルカリなど売買仲介サイトへの出品が急増。出品されている商品の販売元は多岐にわたるが、若い女性に人気の4℃商品は比較的多い。店舗に行く手間が省け、定価より安く買えるケースも多いので、利用する人が増えているようだ。

ジュエリー大手各社も、数年前から自社サイトでのネット販売には意欲を見せている。4℃でも、ネット販売は前年同月比2ケタ増となる月も多く、店舗を含む全売り上げの数%を占めるようになっている。

ただ、市場全体が停滞する中、売買仲介サイトも含め、急成長するネット販売が実店舗での売り上げを食っている可能性は否定できない。

ブライダル商品の絞り込みが裏目

もう1つ、4℃の店舗販売低迷の要因となっているのが、中核を占めるブライダル関連商品の苦戦だ。

ブライダル関連商品の市場は少子化・非婚化で漸減傾向だが、価格が高く好採算のうえ、需要は年間を通じて安定しているため、各社とも力を入れている。

4℃ホールディングスは二極化にいち早く対応し、業績を伸ばしてきた(写真:4℃ホールディングス)

4℃は、百貨店内店舗と路面型専門店でブライダル関連商品を販売している。両販売ルートとも、売れ筋商品に絞り込んで効率よく販売することを狙いに、2016年5月には、百貨店と専門店で共通の商品を増やすなどアイテム数を減らした。

ところが、これが裏目に出る。「一生に一度の買い物」であるブライダル関連商品の場合は、選びやすさよりも、数多くの選択肢に迷いつつ自分に合う商品を選ぶことを顧客が望む傾向が強く、アイテム数の削減は逆効果となったのだ。

その後、今期にかけては徐々にアイテム数を増やしてきたが、ブライダル関連商品の苦戦は続き、既存店売り上げも低迷からなかなか抜け出せない。

同社は業績予想の下方修正と併せ、3月1日付での社長交代を発表した。2013年3月に就任した鈴木秀典社長に代わり、社内外から次の“本命”と見られていた瀧口昭弘専務が昇格する人事だ。

前期までの好業績を達成した一方で、最近の低迷の一因となったブライダル商品の戦略転換も主導した鈴木社長は取締役相談役に退き、木村祭氏会長が瀧口新社長とともに代表取締役として留任する。

木村・瀧口新体制が、ブライダル関連商品の立て直しを含め、4℃をどうやって増益基調に復帰させるか、大いに注目されそうだ。

柿沼 茂喜 東洋経済 記者

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かきぬま しげき / Shigeki Kakinuma

入社以来、一貫して記者として食品・外食、金融・証券、電力・ガス・石油、流通、精密機器、総合電機、造船・重機などの業界を担当。この間、『週刊東洋経済』『会社四季報』『金融ビジネス』の各副編集長、『株式ウイークリー』編集長、編集局次長などを経て現職。

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