「月額1万円」の定額賃上げは実現するのか 子育て層に恩恵、政府内に期待

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トヨタ自動車は17年春闘で、9700円の賃上げを打ち出したが、ベアは16年を下回る1300円にとどめ、一時的な家族手当1100円分を上乗せした。

政府や経済界の一部からは、この「トヨタ方式」が多様な手法の一例となりえるとの声も出ている。

9割占める中小企業雇用者、春闘対象外も多数

「定額賃上げ」は、組合側が従来から掲げてきた方針でもある。連合は中小企業を対象に、ここ数年、月例賃金1万0500円増を要求。定期昇給で4500円、ベースアップで6000円という配分だ。

厚生労働省によれば、従業員1000人以下の中小企業の雇用者は、全体の94%を占めるが、給与水準は大企業の7─8割。

しかも、組合参加者数は減少を続け、今や雇用者全体の17%程度。春闘参加の組合数が半分程度であり、春闘で合意した賃上げ率が実際に適用される対象は、全雇用者の1割程度に過ぎない。

組合も無く連合傘下でもない小規模企業を含め、残り9割の従業員を抱える中小企業の経営者にとって、1万円強という連合指針は厳しい目標ながら、何らかの目安になるはずとの指摘も連合幹部から出ている。

連合では、ベアの裾野がそうした企業にも広がり、消費の底上げや経済好循環につなげたいとしている。

また、足元の中小企業の景況感は、経常利益見通しの伸び率が大企業を上回っており、バブル期以来の人手不足の厳しさも加わり、賃上げには追い風が吹いている。

一方で、榊原経団連会長は「賃金を上げるだけで、経済の好循環が実現するということではない。賃金引き上げと併せて、国民の将来不安を解消していかなければならない」(12月4日会見)と述べた。いわば政府へのけん制球とも受けとれる。

政府の”要請”を受けて、1万円増に相当する「定額賃上げ」にどの程度近づくのか。その帰すうが、政府のデフレ脱却宣言の時期を大きく左右しそうだ。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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