ドアラのディナーショー、転売業者の狂騒曲 運営停止「チケキャン」をミクシィは正せるか

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高額転売を生業としているだけに、コストもかけている。高額の会費を払ってファンクラブに複数名義で入会し、インターネットがつながりやすい環境も整え、人間の何倍ものスピードでサイトにアクセスするボットと呼ばれるソフトも装備。仕入れにはアルバイトも雇う。

音楽業界の怒りが警察を動かした?

ゲッターの跋扈(ばっこ)は、チケキャンの成長とパラレルに拡大したと言っていい。チケキャンを運営するフンザは2013年3月の設立で、2015年3月にミクシィに買収された。

行けなくなったコンサートのチケットを転売したい売り手と、買えなかったチケットを入手したい買い手のマッチングニーズは根強い。

ネックになるのは現物の授受と代金決済のタイミングだ。売り手は現物を送ったのに代金を受け取れない、買い手は代金を払ったのに現物を受け取れないというリスクを回避したい。そのニーズに応え、買い手から代金を預かり、現物が買い手に到着したら売り手に預かっていた代金を支払うという、エスクロー機能(第三者を仲介させて取引の安全性を担保すること)がチケキャンの価値と言っていい。

怪しげなSNSには買いに行かない慎重な人を取り込めた背景には、モンスターストライクの爆発的なヒットで、超優良企業に大化けしたミクシィの子会社という信用も影響しただろう。ただ、買い手が集まるチケキャンの副作用とも言うべきゲッターの跋扈に対し、フンザも、そして親会社であるミクシィも鈍感すぎたことは間違いない。

チケットキャンプは12月7日、突如サービスを休止、取引が成立し決済もしくは受領待ちの状態のもののみサービスを継続、取引成立前の出品はすべてチケットキャンプ側が削除した。

サービス休止の直接的な理由は兵庫県警による家宅捜索。容疑は商標法違反と不正競争防止法違反。「ジャニーズ通信」という、ジャニーズ所属タレントのコンサート情報などのまとめサイトを立ち上げ、そこからチケキャンの出品チケットに誘導していたわけだが、その際にジャニーズ事務所に無断で「ジャニーズ」という商標を使ったことが理由らしい。

したがって、かねてから問題視されてきた高額転売が容疑ではない。とはいえ、長期にわたってゲッターの跋扈を許してきたチケキャンに対する、音楽業界の怒りが警察を動かしたという面もあるだろう。昨年8月23日、日本音楽制作者連盟など4つの音楽関係団体と多数のアーティストが、読売新聞と朝日新聞に、チケットの高額転売に反対する意見広告を掲載している。

しかし、ゲッター対策を施したのは、ヤフーが今年11月、チケキャンは家宅捜索直前の12月1日。1年以上かかっている。まさに遅きに失したと言っていい。

警察の動きはむしろ慎重だったと言える。反復継続的なチケットの転売には古物営業許可が必要なのに、取得している出品者はごく一部。

これまでに警察が、高値転売の違法性を問う根拠として適用してきたのは都道府県の迷惑防止条例違反(いわゆるダフ屋行為)と詐欺だが、どちらも立証ハードルが高く、摘発事例は極めて限定的だった。

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