日本は、なぜ「性暴力被害者」に冷たいのか

伊藤詩織氏の主張は軽視できない

一方、この間、山口氏は自身のフェイスブックに、「法に触れることは一切していません」「当該女性が今回会見で主張した論点も含め、1年余りにわたる証拠に基づいた精密な調査が行われ、結果として不起訴という結論が出ました。よって私は容疑者でも被疑者でもありません」とコメント。検察審査会が不起訴相当の決議を公表した日も、「これによりこの案件は完全に終結し、不起訴が確定しました」と書いている。

また、第1回口頭弁論で提出した答弁書では、伊藤氏側の「原告が意識を失っているのに乗じて、避妊具もつけずに原告の下腹部に陰茎を挿入させる等の性行為を行った」などの訴えを全面的に否認し、争う姿勢を示している。今回、山口氏には弁護士を通じてコメントを求めたが、係争中との理由でコメントは得られなかった。

日本の性的暴行対策は遅れている

大物ジャーナリストが絡んでいる件にもかかわらず、当初、日本の主要メディアはこの件をほぼ報じなかった。また、安倍晋三首相に関する著書もあって、首相と懇意だとされる人物のスキャンダルだというのに、国会で取り上げられることもなかった。「山口氏は安倍首相に近しいジャーナリストで、今回の組閣についても相談を受けていた」と山口氏のかつての同僚は話す。

もう1つ、今回の件が図らずもあぶり出されたのは、性的暴行対策について日本がいかに遅れているか、ということである。自らがニュースになるとは思っていなかった伊藤氏は、被害者としては正義を、そして、ジャーナリストとしては日本が性的暴行被害者とより真摯に向き合う社会に変わることを望んでいる。「私には山口氏に対する怒りはないし、高輪署に文句もない。ただ、日本社会が少しでもよくなるようにしたい」と同氏は言う。

そもそも、日本人の多くが、伊藤氏と同じ状況に追い込まれた場合、まずどうしていいかわからないのではないだろうか。実際、伊藤氏も、性的暴行を受けたとする直後からの「極めて重要な時間」に、法的助言を得たり、必要な支援を求めたりする時間に充てるべきだとは知らなかった。

彼女が助けを求めた先の対応もお粗末だった。訪れた近所の産婦人科医は、伊藤氏が診察室に入ると、伊藤氏と目も合わせず「いつ失敗されちゃったの?」と聞いてきた。そして、モーニングアフターピルを差し出すと、ドアを指し、退室するように促したという。

NGOにも連絡したが、電話に応答した女性は何の理解も共感も示さず、情報提供は面談してからでないとできないと告げた。伊藤氏が混乱していたこの時間に、適切な支援が得られていれば、実際に薬物が使用されたのか、そして、性行為の前に身体的な暴力があったのかなどを調べる、法医学的検体を採取できたかもしれない。

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