東急がグーグル渋谷凱旋を熱烈歓迎する理由 日本で培った都市開発のノウハウ輸出も加速

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中国では、上海地下鉄駅構内での店舗開発コンサルティング事業を受注した。日本の鉄道会社が中国で駅ナカビジネスを行うのは今回が初となる。東急が自由が丘や大井町などで展開する駅ナカ商業施設「エトモ」の運営を通じて得たノウハウを中国で展開しようというものだ。かつて東急がグループ内に車両メーカーを抱えていた時代、中国との間で技術交流が長年続いていた。その縁で、駅ナカビジネスの指南役として東急に白羽の矢が立ったという。

上海地下鉄の駅ナカに10月30日にオープンした「ラインプラス」。東急が手掛けた商業施設だ(記者撮影)

上海地下鉄の徐家匯(シュージャーホイ)駅。その駅ナカに東急は10月30日、商業施設「ラインプラス」をオープンさせた。東急が上海地下鉄向けに手がけるコンサルの第1号案件だ。この駅は1日の乗降客数は16万人と、全366駅中第3位を誇る。周辺にはデパートやショッピングモールが立ち並ぶ上海屈指の商業エリアだ。

「ラインプラス」のフードコート。ラーメンやおにぎりなど中国でも人気が高まっている日本食を手軽に食べることができる(記者撮影)

ラインプラスにはコンビニの「ローソン」や日本のラーメン店、おにぎり専門店、それに流行商品をランキング形式で販売する「ランキンランキン」など8店が入居する。「優れた日本ブランドの店舗が日本の流行文化をアピールし、地下鉄の乗客にも新しい生活スタイルをもたらす」と、上海地下鉄を運営する上海申通地鉄集団の叶彤(きょう・とう)副総裁は期待を寄せる。

中国で日本流駅ナカビジネスは成功するか

叶副総裁は、「近年、地下鉄を“運営する”から“経営する”へと当社の理念が変わりつつある」と話す。つまり、上海地下鉄は鉄道一本やりの経営から、駅ナカ開発など多角化による収益拡大戦略に舵を切った。そのお手本としたのが東急だ。

本案件に携わった東急の渡邊功専務は「鉄道だけでなく街づくり、流通なども行う東急の経営方針が、上海地下鉄の方針に合致したのではないか」と語る。東急は店舗の構成や賃貸契約、デザイン監修、運営管理体制の構築など、上海地下鉄が行う駅構内の店舗開発をサポートするという。

ただ、上海市内ではすでに鉄道や地下鉄の駅ナカで「マクドナルド」など多くの店舗がしのぎを削っており、駅ナカビジネス自体に目新しさはない。そもそも上海の街には、「ファミリーマート」から「ユニクロ」まで、日本ブランドがあふれている。東急はどのような優位性を発揮できるのか。東急は「オペレーション面ではわれわれに一日の長がある」(広報)として、テナント管理など客に見えない部分で貢献する考えだ。

渋谷は東急が作り上げた街だ。クリエーティブな企業を呼び込むという渋谷の再開発は、渋谷という街の特性を知り尽くした東急だからこそ可能となった。単に日本で成功したビジネスモデルを海外で展開するのではなく、地元の特性を読み解いて、そのニーズに合わせて展開することが必要となる。上海地下鉄で東急のコンサルによる第2、第3の駅ナカ商業施設は開業できるか。その成否に注目が集まる。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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