東急がグーグル渋谷凱旋を熱烈歓迎する理由 日本で培った都市開発のノウハウ輸出も加速
1990年代半ばから2000年代初めにかけ渋谷にはGMOインターネットグループやサイバーエージェント、DeNA(ディー・エヌ・エー)といったITベンチャー企業の進出が相次いだ。グーグルだけでなく、アマゾン、そしてNHN JAPAN(現LINE)も渋谷に本社を置いていた時期がある。当時の渋谷は、シリコンバレーになぞらえて「ビットバレー」と呼ばれた。
しかし、グーグル同様、アマゾンやLINEなどの企業も規模拡大でオフィスが手狭となり、より広いオフィスを求めて渋谷を離れた。東急はそれを黙って見ているしかなかった。
現在の東急はJR東日本などと共同で渋谷駅周辺の大規模再開発を進めている。2012年開業の「渋谷ヒカリエ」を嚆矢(こうし)に、今年4月には宮下公園前に16階建ての複合施設「渋谷キャスト」をオープン。
そして2018年秋の渋谷ストリームに続き、2019年度には渋谷駅直上に47階建ての超高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」の開業が控える。さらに道玄坂や桜丘にもビルを建設し、合計で7つのプロジェクトが進行する。すべてが完成するのは2027年。実に15年越しのプロジェクトとなる。
IT企業を渋谷に再び集積させる
渋谷再開発プロジェクトには、ハチ公前広場の拡充や乗り換えの利便性改善のほかに、オフィススペースの供給という目的もある。しかし、単に「箱モノ」としてのオフィスビルを増やすことが狙いではない。東急はさらに踏み込んだ青写真を描く。それは、ITを含めたクリエーティブな企業を再び渋谷に集積させることだ。
大企業向けのオフィススペース供給だけでなく、起業したばかりのベンチャー企業や個人で活動するクリエーターが仕事をできるようなワークスペースやシェアオフィスも準備する。まさに全方位展開だ。何より、渋谷は「109」に代表される先端ファッションの中心であり、エンターテインメント性も強い。
「クリエーターが刺激を受けて、いろいろなアイデアが出てくる場所という点で、渋谷を選んでもらえるチャンスが多くなる」と野本社長は期待する。つまり、東急がグーグルにこだわった理由は、グーグルの渋谷帰還が東急の考える渋谷再開発の象徴となるからだ。
渋谷の再生に向け着々と地歩を固める東急は、都市開発のノウハウを海外でも活用し始めた。たとえば、ベトナムでは現地デベロッパーと組んでホーチミン市郊外のビンズン省にオフィス、商業施設、住宅などで構成される「ビンズン新都市」を開発中。12万人が居住して40万人が働く計画を描く。エリア内には東急の路線バス網が張り巡らされる。そこには東急が田園都市線沿線で行ってきた「東急多摩田園都市」の開発ノウハウを取り入れるという。豪州・パースの郊外でも大規模な宅地開発を実施中だ。
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