天才音楽少年が風俗業界で働き続ける事情 コンクール優勝者が「デリヘルドライバー」に

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そのゲームを2度やって病院に担ぎ込まれたとき、医者は「今度やったら命の保証はしない」と言った。酒が飲めなければもうホストはできない。そう考えだしたとき、指名客だったキャバクラ嬢のスポンサーから、出資するので違法ポーカーゲーム店の店長をやらないかと誘われる。バブルの残り香が漂う六本木、入口に監視カメラを設置して、私服刑事の内偵に眼を配らなければならない商売は大いに儲かった。給料はなんと1日10万円。月収300万円である。

酒が飲めなくなった風見は、クスリと女に走った。ゲーム店はヤクザと通じる商売だ。クスリは簡単に原価で手に入る。女はデートクラブだ。1日12時間働いた後、そのまま渋谷のラブホテルへ入り、残りの12時間とっかえひっかえ女を抱いた。1日10万入るのだからカネは使い放題。クスリが効いているので眠る必要すら感じず、ハイになっているので恐いものなどなく、ちょっとでも気に入らないデート嬢が来たらチェンジを繰り返した。「あのままやっていたら死んでたか、生き残っていても刑務所暮らしだろうね」と振り返る。けれどそんな彼を救ってくれたのも、やはり女であり性風俗だった。

立川駅近くにデリヘルをオープン、自ら経営者に

ある日デートクラブにも飽きてファッションヘルスの店にふらりと入ったとき、ひとりの女性と知り合った。現在の妻である。彼女は風見にクスリを断たせ、自分の働く店に勤務するよう勧める。働き始めてみると風俗産業は彼の性に合った。

以降、風見は商売に熱中し、当時流行っていたイメクラのチェーン店では社長代行という地位まで出世。その店が摘発と東京国税局の査察で閉店を余儀なくされると、オーナーは彼の求めもあって700万円を無担保で融資。風見は友人の勧めもあって、立川駅近くにデリヘルをオープン、自ら経営者となる。

妻と彼を慕うホスト時代の後輩と3人、寝食も忘れて働いた。ところが、予想外に苦戦を強いられることとなる。現在、東京であれば多少郊外であってもデリヘルは点在するが、当時の立川はまだ未開の地であった。そのためか、肝心のデリヘル嬢が募集しても集まりにくかった。地元の女性は、風俗で働くなら都心へ出てしまう。何しろ中央線なら30分弱で新宿に出られるのだ。また、地元の立川だと親バレ、彼氏バレしてしまうからという女の子も多かった。

そこで風見隼人は突飛な行動に出る。新宿の紀伊國屋書店に走り、九星気学の本を買うのだ。700万円を貸してくれた前店のオーナーが気学に凝っていて、やたら方角などを気にしていたのを思い出したからだ。本を読んで勉強していくと、やはり専門家に見てもらうべきだとわかり、駒込で事務所を開く気学の先生を訪ねる。

品のいい老婦人だった。すると彼女は風見が何も言わないうちに、「あなた、立川にお仕事を移された?」と聞いたという。驚いて「なんでわかるんですか!」と問うと、「わかるわよ、そのくらい」と事もなげに言った。そして「また立川とは、悪い方角へ行ったものよねえ」と呆れたように呟いたという。彼女は、風見に以下の行動を取るよう指示した。毎月1度、東京から北西の方角、約100キロの場所まで行き、そこで一泊する。翌日は近くの神社で水を取って、土地のものを食し、温泉につかって帰ってくる。取った水は、東京に戻り、1週間で飲み干すこと。効果は、当日、4日目、7日目、10日目、13日目に現れる。

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