大学生になってからは、ビデオも借りるようにもなった。
「これも最初は、手に取ってレジに持っていくハードルが高かったんですよ。だけどレジで出せば、向こうも事務的にピッとバーコードを通して会計してくれる。それに店員は赤の他人なんで、そこに人間関係はない。慣れてしまえば、まったく恥ずかしくなくなりました」
そんな学生時代、深夜にあるトーク番組を見ていて、昭和初期の世代をつくづくうらやましいと思ったそうだ。
「その頃の人たちは、もう(セックスを)したくてしたくてしょうがないから結婚した、みたいなことを言ってる人がいたんです。年頃になるとお見合い話を持ってこられて、お見合いすればそれで結婚が決まった。ところが、昭和の中盤くらいから、その風潮が変わってきて、“お見合い結婚はダサい。恋愛結婚がかっこいい”となった。結婚するためには、まず恋愛しないといけない。僕のような恋愛弱者には、不利な時代になってしまったんだなと思いました」
女性に興味はあるが、恋愛の仕方がわからない
社会人になってからも、うわべだけの人付き合いをしていた。そんな中でも、身近にいる女性を、異性として好きになることは度々あったが、どんなに好きになっても、気持ちを伝えることはできなかった。学生時代に恋愛経験のない巌は、社会に出て一層“恋愛で恥をかきたくない”という気持ちが強くなっていたからだ。
「僕が好きになるのは、精神的に落ち着いている女性なんですね。そういう人って、ほぼほぼ彼氏がいるし、20代の早い時期に結婚していくんです」
会社は、ある大手メーカーに就職したのだが、30になって、東京本社から関西支社に転勤することになった。ここで生まれて初めて、女性に自分から告白をしたという。
「年齢的にも結婚したかったし、結婚していたほうが周りから信用もされやすいと思ったんです。振られても関西に行ってしまえば顔を合わせることもない。それで、そのときに好きだった女性に、『付き合ってもらえませんか?』と、言いました。そしたら、『ごめんなさい。お付き合いしている人がいます』と、あっさり振られました」
生まれて初めての告白が失敗に終わり、その後関西に転勤になったが、このままでは、一生結婚もできず独身のままなのではないか。また女性との付き合い方がわからない自分にも、不安になっていた。
そんなときに何げなく手に取ったのが、恋愛シミュレーションゲーム『トゥルー・ラブストーリー』だったという。最初は遊び半分、暇つぶしに始めたゲームだったが、このバーチャル体験が恋愛をより身近なものに感じさせてくれるようになった。
「僕がやったのは高校が舞台で、転校まで1カ月半という設定。登場する女性を1人選んで、季節を決める。さまざまなシチュエーションでデートに誘ったり、会話をしたりしながら、イベントを発生させて友好度とあこがれ度を上昇させて、最終的には告白をする。バーチャルだけれど、本当に女性としゃべったような気持ちになるんです。恋愛初心者の僕には、すごく恋愛の勉強になった」
そこからは、恋愛本のたぐいも読むようになったそうだ。そして、東京に戻ってきてから、学んだ知識を実践の場で生かしてみたいと、ある結婚相談所に入った。
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