安倍首相、「消費増税」を政権浮揚に"利用"へ 使途を借金返済から子育て支援支出等に変更

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2016年5月、G7伊勢志摩サミットで各国首脳に資料を示し、「世界経済はリーマンショック前と似た状況だ」と合意を求めた安倍首相。2017年4月予定(当時)の消費増税を延期する口実作りだったが、ドイツのメルケル首相らから「世界経済は堅調」と一蹴された。

結局、安倍首相は「リーマンショック並みの危機がないかぎり、増税は断行する」としていた公約を翻し、「新しい判断」だとして、増税を延期。参院選での与党勝利に結び付けた。

民進党が敵に塩

安倍政権からすれば、再び消費税を種に勝利するチャンスだ。法人減税の基礎固めのため消費増税を求める経済界だが、一方「こども保険」は企業負担が増すため、反対の姿勢。「こども保険の代わりに消費増税財源で子育て支援をやる」と言えば、経済界は乗りやすい。

9月1日に前原誠司代表が就任した民進党は、安倍政権の消費増税先送り路線に対抗し、消費増税の使途を社会保障充実に変える政策を打ち出していた。だがそれは歳出を拡大したい安倍政権にとって願ったりかなったり。民進党は敵に塩を送り、争点を潰された。

しかし、今回の消費増税の使途変更が現実化すると、その後遺症は重大だ。

国の借金がGDP(国内総生産)比2倍と主要国で最悪の中、増税しても財政再建が遅々として進まない先例を作ることになる。今後さらなる消費増税が検討されても、後の政権が「あの時、財務省は安倍政権に譲歩した」と財政再建より国民還元を優先しかねない。

政府は日本銀行と政策協定(アコード)を結んでいる。日本銀行が大規模金融緩和で金利を超低水準にくぎ付けにする一方、政府は成長戦略と持続可能な財政再建に取り組む。今回の措置は、その協定違反ともいえるのではないか。

『週刊東洋経済』9月25日発売号(9月30日号)の特集は「50歳から考える定年後の仕事選び」です。 
野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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