岐阜、愛知のオーナーを経て、再び岐阜のオーナーの下にデイトナは収まり、その後、40年余りガレージでほとんど動かすことなく保管されていたという。今回のオークション出品に際して、フェラーリのスペシャリストが来日し、鑑定を行い、ボディ、エンジン、ギアボックス等の製造番号含め、オリジナリティの高い1台であることを証明するリポートが出された。
通常のデイトナのボディがスチール製であるのに対して、より軽量なアロイと呼ばれるアルミニウム製のボディを纏(まと)っている。記録によれば競技用の4台と、この市販用1台のみが、アロイボディとして製造され、デイトナの中でもたいへん貴重な1台だ。総計5台という製造台数からもわかるように、これらは専用の治具を用いながら熟練したボディ職人たちがアルミ板をたたいて成型したハンドメードボディなのである。
この汚れは「セールスポイント」
そんな素性を持った希少な1台が日本の岐阜県の納屋の中に眠っていた。ただ、冒頭に記したようなホコリだらけの状態で、クルマに詳しくない人なら、見向きもしないかもしれない。
だが、実はこの汚れは「セールスポイント」なのだ。納屋にしまわれていたこと、日本で見つかったことも評価のポイントである。
クラシックカー業界ではこういう長期保管の手つかず案件を「納屋物」と称する。クラシックカーはピカピカな状態に復元されたコンクールコンディションのクルマも評価が高いが、この納屋物のような「Preserved condition(プリザーブドコンディション)」、つまり復元なしに新車のまま維持され続けた個体も、大いに価値がある。こういったヒストリーやそのクルマのかつてのオーナーの名前によっても付加価値がつくのがクラシックカーの世界だ。
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