知られざる中国人観光客受け入れの「黒歴史」 日本人が関与しない受け入れシステムがある
いま起きているのは、2000年代のように利益が出ないから仕切りを明け渡したという話ではない。いわんや、中国客のマナーの話でもない。彼らは自前の進んだシステムを手にしており、それが越境して日本国内の現行ルールに抵触するというケースなのだ。
今夏、南欧で増え過ぎた観光客に地元が苦慮する問題が報じられたが、そもそも誰のための観光客誘致なのか。日本でも同じことが問われるだろう。
インバウンド旅行市場にとって「経済効果のリーケージ(漏出)」をどう考えるかは重要だ。中国からのクルーズ船が大量に寄港する九州では、上陸客に対する市民の関心は低いという。それは「闇ガイド」や「ブラック免税店」の関係が知れ渡り、彼らの営業活動に「場貸し」しているだけで、地元にお金が落ちず、経済効果は持ち去られている(=漏出)と市民が薄々気づいているからだ。
グレーゾーンこそ水を得た魚とばかりの彼らの現況を野放しにしたままで、日本のあるべきライドシェアの未来を描けるのか、という懸念もある。来年の「民泊新法」施行後に予測される海外在住オーナーの「違法民泊」をめぐる市場の混乱も気がかりだ。
経済効果を手に入れたいが、ジレンマがある
こうした問題は中国客が押し寄せる国ではどこでも起きている。どの国も経済効果を手に入れたいが、ジレンマがあることでは共通している。
日本の観光行政はこのまま事態をなりゆきに任せていいのか。観光立国と呼ばれる欧州やアジアの国々に比べ、ルール作りの意思が欠けていたのではないか。
状況を少しでも変えるには、海外の市場の変化や先進的なサービスへの理解が欠かせない。優れたところは取り入れ、ルールの見直しも検討すべきだが、同時に相手国とのルールの確認や取り決めも、いまとなっては必要だと思う。
少子高齢化が進む日本のこれからのインバウンド旅行市場は、いかに外国客に国内の多様なインフラを活用してもらうかがカギといえる。まずはいま何が起きているかを知るべきだろう。
文:中村正人(インバウンド評論家)
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