「マナーの悪い外国人観光客」を冷静に考える 「観光税」と「行政対応」のセットで対処しよう

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これまで、日本には住民のためのルールしかありませんでした。その中で、外国人観光客から見て守りにくいものがあるのなら、そのルールを「調整」する必要があります。もしそのような新しいルールを作るのなら、それを守らせるため、日本を訪れる外国人に周知徹底して、それを守らない人を罰すればいいだけの話なのです。

整備のために「観光税」を徴収しよう

こまで見てきたように、「マナーが悪い」にはさまざまな要因があり、すべてが外国人の問題ではありません。

どのようなルールが守られていないかを調査して、それが「守れるはずのないルール」なら調整する必要があります。

守れるはずなのに守られていないなら、既存のルールをしっかりと周知するべきでしょう。ルールを知らない外国人観光客に責任があるというのはあまりに心が狭いですし、そういった人を「マナーが悪い」とは言いません。外国人を誘致したのにルールを周知していないことが問題でしょう。

さらに、そもそも外国人観光客は住民ではありません。日本を楽しむために来ているのですし、おカネを落としてくれるのですから、絶対に守ってほしいルールは何で、守られなくても我慢できるルールは何かを考える価値もあります。

そのうえで、どうしても破ってはいけないルール違反については、警察などの出番となります。

しかし、その一方で、これらの対応を行うにはおカネがかかるという問題があります。

住民の立場からすれば、外国人観光客の対策を納税者の負担で行うのはいかがなものかというのが正直な気持ちでしょう。自分たちで納めた税金が、地域におカネを落としてくれるとはいえ、日本にわずかしか滞在しない外国人のために費やされることに抵抗を感じる人も多いでしょう。

そこで重要になってくるのが、「観光税」という考え方です。

多くの国では、行政が呼んだ外国人観光客に伴うマイナス部分への対処のため、ホテルの宿泊税などを課しています。諸外国で一般的なのはホテル税ですが、出入国税もあります。やはり、外国人に金銭を払ってもらうのが大事です。

これまでの記事でも繰り返し述べてきましたが、観光は「産業」ですので、そこにおカネというメリットが伴わないで、ただ大きな負担を強いられるものであれば、当然のように住民から「反発」が起こります

だからこそ、観光業者がサービスに見合うだけの価格を観光客へ求めていくのと同時に、行政も負担を軽減するための税金を課すべきなのです。

税金を課して、外国人のためのゴミ箱の設置やゴミの収集、ベンチの設置などさまざまな整備を行うと聞くと、反発される方もいらっしゃるでしょうが、そのような整備を「外国人のため」と思わなくてもよいのです。

外国人、日本人、と利用者を限定するのではなく、日本という国がもっと快適で、より過ごしやすい国になっていくための整備であって、そのためのおカネを「観光」が賄っている。そのような考え方は、これからの日本で必要になってくるのではないでしょうか。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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