「マナーの悪い外国人観光客」を冷静に考える 「観光税」と「行政対応」のセットで対処しよう
特に「ゴミ問題」は、一般に考えられているような「住民目線」の問題ではありません。行政の適切な対処で解決できる問題です。
ゴミ問題の根本は「守れるはずのないルール」
大前提として、外国人観光客は海外からゴミを持ち込んでいるわけではありません。日本のお店で買ったものから出るゴミを、どこに捨てればいいかわからないということで、ポイ捨てしています。
日本のゴミ捨て体制というのは、すべて日本で暮らしている人を想定して作られていますが、外国人観光客にこれに従えというのは無理があります。
皆さんも海外で観光すればわかると思いますが、観光客は1日中外出していて、いろいろな場所を渡り歩きます。そこで購入したものをどこに捨てればいいのか、ゴミ箱がどこにあるのかを、日本人ほど把握していません。ホテルまで持ち帰れ、観光している最中は何も捨てるな、持って帰れないなら何も買わず、何も食べずにゴミは出すな、というのなら、「観光」を推進する意味がありません。
冒頭で申し上げたように、「日本のゴミ捨て方法を知らない外国人」をここまで大量に招致したのは「国策」に基づいているわけですから、行政の責任で外国人観光客が利用しやすいゴミ捨て体制を整備すべきではないでしょうか。
これは、いま問題になっている「民泊」も同様です。
たとえば、管理が行き届いていない「民泊」を外国人観光客が利用して、「不燃ゴミは木曜日」と指定されていたとしましょう。外国人は指示に従ってゴミの分別をしましたが、チェックアウトするのは火曜日。ゴミをそのまま部屋に残していくことができないため、しかたなくゴミ捨て場に出しました。
付近の住民からは、「マナーの悪い外国人がゴミ出しルールを守らない」という不満の声が上がるでしょうが、はたしてこれはすべて外国人観光客の責任でしょうか。「観光客」という人々の利用スタイルに合わせたシステムを提供できていない、民泊側にも問題があるのではないでしょうか。
かつて軽井沢の別荘地でも、まったく同じ問題がありました。「別荘族」は週末に軽井沢で過ごして日曜日に東京に帰ります。住民は守っている「指定日」に出せずに、生ごみなどを日曜日に出してしまうということで、周辺の住民から「別荘族はマナーが悪い」という不満の声が上がったのです。
では、彼らは生ごみを東京に持ち帰ればよかったのでしょうか。電車の中に生ごみを持ち込めば、それはそれで多くの人に迷惑がかかります。
住民の指摘は文字どおり正しいです。しかし、別荘族が来て町が潤って、ビジネスとなっているのに、別荘族には守れないルールを作って、それを基準にして人を「マナーが悪い」と評価するのは、はたして正しいでしょうか。よりよいルールを考える必要があるでしょう。事実、軽井沢では、別荘族のためのルールができました。
こういう住民システムの「穴」というのは、サービス提供側の努力も必要ですが、行政でしか解決できない部分もあります。ベネチアやバルセロナの「反観光デモ」に対する考察記事(欧州「怒りの反観光デモ」は京都でも起きるか)でも触れましたが、「反観光デモ」の核心は、行政の対応に対する不満です。日本のゴミ問題もまったく同じなのです。
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