解任されたバノン、トランプ政権へ宣戦布告

「国際派」の勝利か、なおポピュリズム継続か

さらに6月1日に地球温暖化対策の国際合意であるパリ協定をめぐって、バノン氏は離脱を主張。クシュナー上席顧問やゴールドマン・サックス証券出身のゲイリー・コーン国家経済会議委員長など"国際派"と呼ばれるグループは残留を主張していたため、対立が明らかになっていた。

こうした立場の違いを背景にホワイトハウス内の力関係に変化が見え始める。大統領選挙中はバノン氏とクシュナー上席顧問の関係は極めて良好で、叔父と甥の関係に似ているとさえ言われていたが、4月以降、両者の対立は抜き差しならないところまで進んでいった。メディアは繰り返し、バノン氏は辞任するか、解任されると憶測記事を流し始めた。

バノン氏と他のスタッフとの対立はさらに深まり、マクマスター国家安全保障担当補佐官との軋轢へと発展していく。海外への軍事介入に否定的なバノン氏と、アフガニスタンへの増派を主張するマクマスター補佐官の対立はスキャンダルの様相を呈した。極右メディアのマクマスター補佐官への批判は極めて過激であり、そうしたマクマスター批判グループの背後にはバノン氏の影があった。

バノン氏は「北朝鮮に対する軍事的な解決はない」と、ホワイトハウス内の強硬論を批判。一方、中国に対しては、貿易戦争を躊躇すべきではないと主張。中国との対立を回避すべきだとするコーン国家経済会議委員長やディナ・パウエル大統領補佐官など金融界出身の"国際派"と真正面から対立した。ホワイトハウスは次第に"国際派"に掌握されて、バノンは包囲されていった。

決定打になったバノン氏インタビュー記事

状況が一気に動き出したのは、ショーン・スパイサー報道官とラインス・プリーバス首席補佐官の更迭である。バノン氏は、この人事に反対した。トランプ大統領は7月28日にジョン・ケリー国土安全保障長官を後任に充てた。ケリー新首席補佐官の使命は、ホワイトハウスのガバナンスを立て直すことであった。トランプ大統領は、ホワイトハウス内からの相次ぐ情報リークに怒りを抱いており、情報リークの主犯はバノン氏ではないかと疑っていた。

この人事をきっかけにトランプ大統領はバノン氏の解任を考え始めた。トランプ大統領はケリー首席補佐官にバノンの評価を命じている。ケリー首席補佐官には、「バノン解任」という、いわば猫に鈴をつける役割が期待されていた。その頃から、ホワイトハウス内では、バノン氏は「解任されるのか」「されないのか」ではなく、もはや「いつ」「どのようにして」が議論されるようになった。いかにしてバノン氏の体面を維持しながらホワイトハウスから排除するかが検討されるようになり、その結果が、辞任発表声明の奇妙な文章になったわけだ。

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