解任されたバノン、トランプ政権へ宣戦布告 「国際派」の勝利か、なおポピュリズム継続か
バノン氏は、マクマスター安全保障担当補佐官などから、シャーロッツビル事件でトランプ大統領がネオナチを擁護するかのような発言を行ったことに対する責任を問われた。
解任の最後の一押しとなったのが、8月16日のリベラル派の雑誌『アメリカン・プロスペクト』(The American Prospect)に掲載された記事であった。バノンは同誌の編集者ロバート・カットナー氏に電話し、対中国政策や対北朝鮮について議論し、前述のような考え方を述べた。さらにカットナー氏は、記事の中でバノン氏が敵対する同僚を批判したことを明らかにした。この記事で、それまで微妙に保たれていた均衡が一気に崩れた。
バノン氏が果たした役割は、単にトランプ大統領を選挙で勝利に導いたことにとどまらない。バノン氏は白人至上主義者、ポピュリズム(大衆迎合主義)思想の指導者として知られている。トランプ大統領は自らをポピュリストの大統領と称しているが、そうした理論的な枠組みをトランプ大統領に与え、選挙で白人労働者をトランプ陣営に取り込む論拠を提供したのはバノン氏であった。
トランプ大統領が掲げたポピュリスト的な選挙公約はバノン氏がその政策を紙に書き、自分の執務室の壁に貼り、トランプ大統領にその実現を迫っていた。だが、そうした一連の政策は国際派の抵抗で骨抜きにされつつある。
バノン氏は「公約実現」へ圧力をかける
バノン氏は極めてユニークな経歴を持つ。バージニア州ノーフォークの労働者階級出身である。バージニア工科大学を卒業し、海軍大尉として中東に派遣された。その時の経験から強烈な反イスラム主義者になる。その後、ハーバード大学ビジネススクールを卒業。ゴールドマン・サックスのM&A部門で働き、さらにハリウッドで投資会社を設立している。そして"オルト・ライト"といわれる極右思想の指導者になり、ブライトバート・ニュース(Breitbart News Network)の経営者になり、極右思想の普及に努めている。
バノン氏はエスタブリッシュメントを批判する右派ポピュリストを代表する論者である。トランプ大統領も共和党のエスタブリッシュメントに対抗するアウトサイダーとして大統領選挙を戦った。いわば共通の敵を持っていたことが、二人を結びつけた。だが、トランプ大統領はバノンを切り捨てた。では、これからトランプ大統領は何を目指していくのだろうか。
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