風見しんごが初告白した「娘の死」からの10年 さらなる悲劇、それでも家族は強く生きる
しかし、妊娠から5カ月。夫とともに病院を訪れた尚子さんは、衝撃の事実を告げられる。お腹の子は染色体に異常があり、おそらくダウン症の男の子だというのだ。風見さんは思わず言葉を失ったという。
「僕がいなくなった後のことを考えてしまうんですよ。次女と長男が残ったら、2人がちゃんと向き合って生きていけるだろうか? 俺が何歳で死んだら、その時は何歳と何歳だからどうで…とか、そんなこと考えたってわからないじゃないですかどういう結果になるか。」(風見さん)
それでも「前向きに!HAPPYに♡」
そんな夫の思いに対し、尚子さんがこの日の日記に綴っていたのは
「4月18日 羊水検査の結果が出た。ダウン症の男の子だった。そう来たか…!!でも一生懸命、動いてるよ!!前向きに!HAPPYに♡」
「『こころ』という名前を付けたんですけど、もともと児童福祉学を大学で勉強していたので、産まない…という選択肢は無かったですし、むしろ楽しみでした!」(尚子さん)
尚子さんは、こころちゃんに会える日を楽しみに出産と育児に向け、準備と勉強を開始。ダウン症の子を持つ親御さんたちのもとを訪ね歩いては、子育ての話を聞いてまわった。その頃の日記には、母として覚悟をもって出産に挑もうとする尚子さんの言葉が綴られていた。「色々不安はある…でも子育てに不安は必ずあるもので、ハンディがあっても無くても一緒!!生命の重み、ありがたさを誰より知っている私達が投げ出すことはできない」
「僕はオロオロして…不安でしたから、逆に妻のそういった体験とか言葉がね、すごく僕自身を励ましてくれましたよ」(風見さん)
前向きな妻に背中をおされ、家には男の子用のグッズや玩具がどんどん増えていった。「楽しみにしてるよ、こころ。きっと大丈夫。父ちゃんがしっかり守ってあげるからね。元気に安心して産まれておいで」。お腹の子を思う尚子さんの気持ちは万全。家族みんなが、その誕生を心待ちにしていた。
しかし、運命はあまりに残酷だった。妊娠から8カ月。胎児の動きに異変を感じ病院を訪れると、赤ちゃんのお腹に腹水が溜まっているという。とにかく安静にして経過を見ることとなったのだが、その2日後、医師からこう告げられる。
「……残念ですが、心臓が止まっています」(医師)
「えっ!そんな…」(尚子さん)
病院のベットの中、尚子さんは何度も何度も、「ごめんね」と言い続けた。
「去年、えみるいなくなったばっかりですよ?また今年こころですか?何でこんな立て続けで、何でウチばっかりこんな試練が続くんですか?いくつ、あといくつあるんですか?ここまで…何か悪いことしました?って…」(風見さん)
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