風見しんごが初告白した「娘の死」からの10年 さらなる悲劇、それでも家族は強く生きる
「最後ぐらい、頑張らなくてもいいよ!って言ってあげられたら良かったかなって。後悔してます……」(尚子さん)
深い悲しみと後悔に打ちひしがれる日々。しかし、苦しんでいるのは夫婦だけではなかった。そのことを尚子さんは意外な形で知ることになった。
自分を「えみる」だと言い出した「ふみね」ちゃん
ある日、次女のふみねちゃんを散歩に連れて行くと、通りすがりの女性から「お名前は?」と話しかけられた。するとふみねちゃんは…
「えみる」(ふみねちゃん)
「違うでしょ ふみねでしょ」(尚子さん)
「ううん わたし えみる!」
「だって、えみるがいれば大人は泣かなくなるでしょ?だから私がえみるになるの」(ふみねちゃん)
「凄く可哀想なことをしたなと思います。まだ3歳のふみねにとって、えみるは憧れの存在だった。その凄く大きな存在がいなくなったのに、私はいっぱいいっぱいで、大きいものを一人で抱え込ませてしまった。」(尚子さん)
夫婦はようやく、守るべき大切なものに気がついた。「ごめんな、ふみね。全然、気付いてやれなかった」。風見さんが謝ると、ふみねちゃんはその小さな手を伸ばし、「いい子、いい子。チチはいい子。だから泣かないで」と風見さんの頭を撫でたという。
「自分より小さい子にするように…いい子いい子、いい子いい子ってやってくれてね。今思うとね、あんな小さい子供に随分助けてもらいましたよ」(風見さん)
そんな娘をみた尚子さんは、ある決意を固める。
「私 いつか天国へ行った時、えみるに会えた時“頑張ったね”って言ってほしい。だからね、私、ふみねのためにやれることは全部やってあげたい。全部を頑張るって決めたの。それがこれからの私の生き方」(尚子さん)
「とにかくふみねを一生懸命育てて、ふみねはお姉ちゃんの分まで頑張るんじゃなくて、えみるの分は私が頑張る。ふみねはとにかく元気で、頑張らなくていいよって言い続ける」(尚子さん)
こうして、ふみねちゃんから前を向くキッカケをもらった妻、尚子さん。そこへ、新たな希望の光が差し込んだ。
長女の死からちょうど1年後、なんと尚子さんのお腹に新たな命が宿った。それは、ふみねちゃんがずっと望んでいたことでもあった。奇しくも、その妊娠がわかったのが、えみるちゃんの1回目の命日の頃。尚子さんは「きっと…えみるが連れて来てくれたんだ」と思い、凄く嬉しかったという。
「ちょっと次女に迷惑をかけた分、ああ、これでちょっと次女にある意味恩返しじゃないですけど…できるかなぁなんて。」(風見さん)
それはあの日以来、家族がはじめて心から喜べる出来事だった。
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