トランプ税制改革方針が超軽量級だった事情 現政権の目玉政策なはずなのに・・・

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作成にかかわったのは、トランプ政権のスティーブン・ムニューチン財務長官とゲイリー・コーン補佐官、議会からはライアン下院議長とミッチ・マコーネル上院院内総務、さらには、税制を担当する委員会である下院歳入委員会のケビン・ブレイディ委員長と上院歳入委員会のオリン・ハッチ委員長だ。

共同方針には、3つのサプライズがあった。

第1は、発表された日にちである。トランプ政権と議会共和党の有力者がすり合わせていた共同方針は、本来ならば夏季休会明けの9月に発表される予定だった。今回の発表は、予定より1カ月も早かったことになる。

第2は、議会が導入を目指してきた国境調整税について、今回の改革には盛り込まない方針が明らかになったことだ。国境調整税では、輸出が減税の対象となる一方で、輸入に対しては増税が行われる。巨額の税収増を減税の財源としたい狙いがあったが、国内外からの反論は根強く、その導入をめぐる調整が難航していた。

驚くほどの「超軽量級」だった

こうした2つのサプライズは、税制改革の実現に向けた好材料のようにも思われる。しかし、道のりの遠さを示唆するのが、第3のサプライズである。肝心の共同方針の中身は、驚くほど貧弱だったのだ。

「さすがに1ページは超えるのか?」

米国では、共同方針の発表に先立ち、このような疑問が飛び交っていた。今年4月にトランプ政権が発表した税制改革の基本方針は、1ページに収まるような簡略な内容だった。そのため、今回の政権と議会の共同方針では、どこまで税制改革の内容が具体化されるかが注目されてきた。

ところが出てきた共同方針は、驚くほど軽量級だった。分量こそ2ページにわたっているものの、税制改革の必要性を訴えている部分などを除けば、具体的な内容への言及は最小限にとどまっている。税率や減税額など、数字を用いた言及は皆無であり、4月に発表されたトランプ政権の基本方針よりも、さらに内容は薄かった。

なぜトランプ政権と共和党議会は、ここまで貧弱な基本方針を発表したのか。そこには、議会の夏季休会を前に、税制改革に向けた機運を盛り上げることから始めようという狙いがある。

トランプ政権や議会共和党にとって、夏季休会は陰鬱な雰囲気を変える機会になりうる。休会に入れば、議員は地元に帰る。オバマケア改廃の失敗など、いい話題に事欠く共和党の議員には、前向きで語りやすいテーマが必要だった。首都ワシントンでの政争に明け暮れてきたトランプ政権の関係者も、この夏は税制改革の必要性を遊説して回る方針である。

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