ふくおかFG・十八銀、統合を阻む「公取委の壁」 人口減・低金利にあえぐ地銀、再編にハードル

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バブル崩壊後、1990年代末に金融危機に見舞われてから、しばらく地銀の再編は「救済合併」の色彩が強いものだった。その後、商圏の拡大を目的とする県や地方をまたがる「広域再編」がブームとなったが、最近では、同じ地域内での金利の叩き合いによる疲弊を避け、重複する店舗や事務コスト削減のできる県内再編が出始めている。同一県内の例として、三重県の第三銀行(松阪市)と三重銀行(四日市市)、新潟県内の第四銀行(新潟市)と北越銀行(長岡市)の統合計画がある。

日本銀行は長年に渡り低金利政策を継続。2016年2月にはマイナス金利政策、2016年9月には10年の長期金利をゼロに誘導することを基本にイールドカーブコントロールを導入しており、金利は一段と低く抑えられた。

そのため、地銀の運用収益の確保は難しくなっている。たとえば、十八銀行の場合、貸出利回りが2014年3月期の1.51%から2017年3月期には1.23%まで低下。この間、貸出金平残は2ケタ伸びているが、貸出金利息は減少した。利回りの低下を貸し出し増でカバーできない状態だ。この状況はほかの地銀も同様である。

広域統合ではメリット薄い

地域シェアへの影響があるなら、これまでどおり広域再編を進めればいいとも思える。もともと十八銀行の大株主には、九州フィナンシャルグループを結成した熊本県の肥後銀行(2017年3月末で持ち株比率2.1%)と鹿児島県の鹿児島銀行(同1.8%)がいる。

長﨑市内で向かい合う十八銀行と親和銀行の店舗(編集部撮影)

だが、十八銀行はあえて、ふくおかFGとの統合を選択した。それは、県内で長年火花を散らしていたライバルの親和銀行との統合にまで踏み込まなければ、生き残りは難しいと判断したからだろう。ふくおかFGには、親和銀行のほか、熊本県の熊本銀行(旧熊本ファミリー銀行)を事実上救済統合し、収益化してきた実績もある。

前出の大槻氏は「生き残りに残された時間が限られる中、経営効率を上げるなら、近場同士の再編で、規模のメリットを取る方が、広域再編より効率化を図りやすい傾向にある」と話す。

今回の無期限延期でも、ふくおかFGと十八銀行はあくまでも統合の実現を目指す。

「両行の約2万社のお取引先に統合に関する説明を実施して9割の賛同を頂いている」と主張。公取委に対しては、問題の解消策として「新規貸出金利等の情報開示により、統合により金利を引き上げていないことを定期的にモニターしていただくこと」や「アンケート等による顧客の意見の集約、地元の利用者による第三者委員会による監視・評価の仕組みの導入」なども提案している。

さらに、競争環境維持のための措置として検討するのが、貸出債権の他行への譲渡だ。多様な決済機能を提供する銀行の場合、店舗売却は簡単ではない。そこで浮上するのが債権譲渡だが、そもそも貸出先のうちどの先を他行へ譲渡するのか、その線引きは簡単ではない。他行への債権譲渡については、全国地方銀行協会の中西勝則会長(静岡銀行会長)が「顧客不在で本末転倒だ」と述べるなど、業界から異論も出ている。

ふくおかFGと十八銀行の統合は、今後の地銀再編のモデルケースとなると見られていただけに、その行方が業界に与える影響は大きい。公取委がかたくなに振り上げた拳を下ろさないとなれば、多くの地銀の経営トップにとって選択肢が狭まることになる。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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