男はみんな「元カノの成分」でできている 43歳男性が忘れられない人を思い出すとき
彼女から教わった音楽を今でも聴いている。彼女から勧められた作家の新刊は、今でも必ず読んでいる。港区六本木にいながら暑い国のことを考えるのは、インドが好きで「仲屋むげん堂」で働いていた彼女の影響だ。そして、大槻ケンヂさんの言葉を借りれば、今ボクのやっていることの何分の一かは、彼女と出会っていなければ存在しなかっただろう。いろいろなことを彼女との日々の中から学習したんだ。
ボクはひたすら原稿に向かった。たいしてドラマチックじゃないボクの人生も振り返れば、自分なりに尊いことに気づいた。その真ん中には彼女がいて、ボクは今日まで生きて来られた。
あなたのために書きました
21年間働いたボクを人は大人と呼ぶ。大人と呼ばれるボクの原動力は、あの時の彼女の「君は大丈夫、おもしろいもん」だった。去年から試行錯誤を重ねた小説は6月30日に発売された。題名とは裏腹に、本当はだんだんと大人の世界に絡め取られていくボクから、彼女は離れていってしまったんだけど。
とっくに大人になってしまったボクが「大人になれなかった」とうそぶくとき、あの頃の自分が死なずに、43歳になって公園のベンチで弁当を食う自分の中で、まだ息をしているのを感じる。だから男が昔の恋人のことを、ついこの間のことのように生々しく思い出したとしても、「それがあなたの成分なのね」と笑って(笑わなくてもいいですが)許してほしい。
いつか彼女がたまたま本屋に寄って、この小説を手に取ってほしいと思ってボクは書いた。あなたのために書きました。そしてきっとその内容を見て、君はあの時みたいに言うと思ってしまうんだ。また棒読みで、「マジかー」って。
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