JAL、「役員報酬もらいすぎ」と株主の不満噴出 控えめ中計に低迷する株価、役員の答えは…

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

業績連動型賞与は業績目標どおりに達成したときの額を100とすると、0~200程度で変動。当期純利益や安全運航に関する指標、各役員の個別評価指標などが基準となる。株式報酬の場合は、連結営業利益率、連結ROIC(投下資本利益率)、顧客満足度などが指標となっている。

なお、報酬として交付を受けた普通株式については、一定の売却制限が課されるという。

抜本的に報酬体系を変えた背景には、4月28日に発表された今年度からの新たな中期経営計画がある。2010年の経営破綻後、公的資金で再建したJALは、国土交通省の通達により新規投資や路線開設が制限されていた。この制限が今年3月末に期限を迎え、足かせの取れた状態で新たな計画を作った。

「挑戦、そして成長へ」と題されたこの計画は、2020年度までの4年間で座席供給量(座席数と輸送距離を掛け合わせた数値)を国際線で23%、国内線で5%伸ばすというもの。最終年度の売上高は1兆5000億円(2016年度比16%増)、営業利益は1800億円(同5%増)を目指す。

株式市場が落胆した中期計画

こうした計画の完遂を目指す姿勢が、役員の評価体系にも表れたといえる。だが、株式市場の受け止めは好意的だったとは言いがたい。中期計画発表の翌営業日、JALの株価は7.3%も急落した。成長を強調した計画ではあるが、過去5年間の国際線供給量も17%ほど増えており、拡大ペースが特段大きく変わるわけではないのだ。

機材計画も”控えめ”だ。総会の終盤、株主の1人から「2020年度までに国際線の機材数が(85機から92機へ)7機しか増えないのは、成長には不十分ではないか」という質問が出た。

この直前に植木社長が「東南アジアと北米を行き来する海外客をターゲットにする。ここを往復する客は年間1300万人で、われわれは1%しか取れていない。もっと伸びていける」と話していたためだ。

JALの植木義晴社長は成長を志向しつつも、慎重姿勢を崩さない(写真は4月の中期経営計画発表会見にて、撮影:尾形文繁)

回答した経営企画本部長の西尾忠男専務は「主に増やすのがボーイングの787-9型機で、国際線では一番大きな機材だ。LCC(格安航空会社)と競合しない、インドネシアやタイのような収益性の高い長距離路線に大型機材を投入するなどして成長を目指す」とした。

「今のJALはなんだか元気がないね。中期計画にもがっかりした」。50代のある男性株主は総会からの帰路でそう漏らした。「自己資本比率などの財務体質を重視するといわれても、どう成長するのかが不明確。これではANA(ホールディングス)のほうが(投資先として)よく見える」(同)。

一方、破綻前も株主だったという70代男性は「役員報酬のことをうるさく言う人もいたけど、破綻後のJALはよく頑張っていると思うよ」と一言。株価の動きを見る限り、こうした評価は少数派だといえる。

以前、「JALの株価には企業価値が適切に反映されていない」と話していた植木社長。投資家たちとどうコミュニケーションを取っていくのか。在任5年を超えた今、改めてその姿勢に注目が集まっている。

中川 雅博 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事