創業会長が介助犬の育成に乗り出したワケ 天皇・皇后のご視察で人生観が変わった

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「手形を切らない、外注に頼らない、仕入れ在庫を持たない、の3つです。そして、建前でなく本音で勝負、実業で学ぶことです」

特許についても、ご自身で学んだそうです。初めて見本市に出した商品が人気になって、1週間に1台売れる。他のメーカーに比べ、見た目は武骨だが、値段は半分、スピードは2倍、と魅力的です。他社も当然まねしたいと思います。でもそれを見越して、事前に特許申請していました。用意周到ですが、これも本から学んだと言います。

会長はまた、こうも付け加えました。「会社は大きくしないほうがいいですよ。あまり手を広げずに、自分の得意技術を武器にすべきです」。従業員は65名。まさに実学の柳本会長の下、精鋭の技術者集団です。

柳本会長に訪れた大きな転機

天皇・皇后両陛下のご視察で人生観が変わる

3つの鉄則を胸に1979年に法人化、その後も順調に発展していきました。そして2005年、大きな転機が訪れます。「その年の8月に、天皇皇后両陛下のご視察を賜りました。いやぁ、そりゃもう緊張しました」(柳本会長)。

京都、兵庫、大阪への行幸啓において、レザックに両陛下をお迎えすることになったのです。当日は、両陛下に大阪府知事、宮内庁の方々が随行され、近畿経済局長、大阪商工部労働部長、八尾市長とレザック関係者が会社でお迎えしました。

まず柳本会長が、蓄積した自動化技術の歴史を述べ、また印刷紙器・抜き型業界・真空成型業界・自動車業界・ラベル業界とのかかわりをご説明。続いて工場内をご視察いただき、レザック製品4機種の試運転もご覧いただいたそうです。

「両陛下がお越しになると半径3mほどの範囲で空気が変わるんです。空気の層とともに動かれている、といった感じでした。でも陛下は話しやすい雰囲気をつくってくださり、各担当者にも機械についてのご質問や暖かいお言葉をかけていただきました。最後にご懇談の時間がありました。

事前に15分と決められており、宮内庁の方のドアのノックを合図に終了の段取りでした。ところが緊張でコンコンという音が聞こえず、気がついたら5分オーバーしていました。エライことをしたと恐縮しましたが、『これからも、モノづくりの発展に頑張ってください』とのお言葉を賜り、また私ども社員の健康もお気遣いいただきました。今でも思い出しては身を律しております」。

これが冒頭に述べた「5分」の謂れです。天皇陛下は、分刻みの苛酷なスケジュールをこなされていることを改めて知るとともに、その時の柳本会長の心中もさぞかし大変だったろうと思いやられます。

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