中東の緊迫化にまったく反応しない原油相場 一部では市場が警戒すべき複数のリスクも

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 6月8日、原油価格は、中東の地政学的緊張の高まりにまったく反応していない。ロシアの油田で2015年1月撮影(2017年 ロイター/Sergei Karpukhin)

[ロンドン 8日 ロイター] - 原油価格は、中東の地政学的緊張の高まりにまったく反応していない。3年にわたる原油のだぶつきで、供給動向を巡る懸念が一掃されてしまったからだ。しかし、一部では市場が警戒すべきリスクがいくつか存在するとの声も出ている。

サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など数カ国は5日、カタールが過激派組織を支援し、イランに融和的態度を取っていると批判し、国交を断絶。7日にはイランで国会議事堂と聖廟が襲撃される事件が発生した問題で、同国の革命防衛隊がサウジを非難した。

世界が1日当たりに必要とする原油の約3分の1を供給する中東地域でこのようにきな臭さが増したにもかかわらず、原油価格は1バレル=49ドルを割り込み、1カ月ぶりの安値に沈んだ。

インベステックのポートフォリオマネジャー、トム・ネルソン氏は「過去15年で、中東の緊迫化が現在ほど原油価格に反映されない局面は決してなかった。実際、市場は供給過剰にあり、ずっと先まで過剰状態に置かれるとみなされている」と指摘した。

原油の世界的な需要は堅調だが、石油輸出国(OPEC)やロシアなどの非OPEC産油国が協調減産を実施しているにもかかわらず、在庫はなかなか減らない。

経済協力開発機構(OECD)諸国の原油在庫はおよそ30億バレルと、1カ月分の需要に相当する水準に上っているため、投資家は供給懸念を抱こうとしない。

エナジー・アスペクツのアナリスト、リチャード・マリンソン氏は「在庫水準がはっきりと減少基調となり、水準が今よりずっと少なくなるまでは、市場は比較的落ち着いたままで推移するだろう。地政学問題は重要であるとはいえ、市場で圧倒的な関心を集める材料になりそうにはない」と述べた。

それでも安全保障専門コンサルティング会社コントロール・リスクスは、カタールに絡むリスクの分析を強化していると表明。同社のコンサルタント、アリソン・ウッド氏は「カタールがUAEへの天然ガス供給を止めれば、対立が大幅にエスカレートする。私はその時点で懸念し始める。また、もしサウジ軍が動員されカタールとの国境に向かえば、もう1つの心配と言える。これらは今後注視していく2つの警戒要素だ」と話した。

アリアンツ・グローバル・インベスターズのエネルギーアナリスト、ローハン・マーフィー氏は「(カタールと他の中東諸国との対立は)中東が不安定な地域であることを思い出させてくれる。最終的には、常にこうした緊張に行き着く」と説明。市場関係者は誰もが供給サイドのリスクを点検しながらも、なぜかイランに付随するリスクや、リビアの生産量が増加でなく減少したり、来年にそれまで数年間の過少投資の影響が見え始める可能性を不安に思っていない、と首をかしげている。

(Amanda Cooper記者)

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