別居親と子どもの面会交流、その切ない実態 子どもと離れた3人の経験者が語る
夫とは今、離婚訴訟中だ。お金はすべて夫が管理していたので、佐藤さんは取得した保育士の資格を生かし、保育園に勤めている。
「娘は私の命です。でも娘は父親も大好きでした。その父子の関係は壊したくない。私のところにも夫のところにも子どもの意思で行ける、本当の自由が与えられる日が来ることを望んでいます」
昨年12月の面会時の、子どもの言葉が忘れられない。祖母のお見舞いに行った帰りの電車の中でのこと、
「私が“お父さんとも3人でご飯を食べることだってできるかもしれないよ”って話をしたら、びっくりした表情をみせた後、うつむいて“やっぱり家族は一緒がいい”ってつぶやいたんです」
娘が帰って来ることができる場所を作っておかなくちゃ。そんな思いだけが今、佐藤さんを支えている。
「2年間、月2回の面会交流を続けてきました。ファミレスで2人で会うんですが、1時間の面会中はほぼ無言で、私と一切目を合わせません」
そう静かに語るのは、吉田裕子さん(仮名)。息子は今年で17歳になる。
「つらかった。同居していたころの無邪気に笑う息子はどこにいったんだろうって。でも会わなくなると、息子にやっぱり見捨てたな、と思われるのだけは嫌だったんです」
2000年に授かり婚。直後に金銭感覚のズレが露見した。
「渡されるのは生活費の5万円だけ。給与明細を見せてと言っても、見せる必要がないの一点張り。ケンカを子どもに見せたくなかったので、ずっと我慢しました」
息子は小学校を卒業するころから頻繁に夫の実家に行くようになった。今にして思えば「すでに私からの引き離しが始まっていたんです」。夫とその両親が新興宗教に入信しており、小学校を卒業する息子に「俺か母さんかどっちを選ぶんだ。母さんにつくなら俺はお前と縁を切る」と迫っていたことを後日、涙ながらに語る息子の口から知った。
「どっちも選べないよ」
息子の中学入学後、夫が実家に戻り、引き止めたが息子もそのあとを追った。
夫が離婚調停を申し立て、対抗する形で吉田さんは面会交流調停を申し立てる。
周囲の友人などに“お父さんお母さんどっちも選べないよ”と漏らしていたという息子も、父親との暮らしが長くなるにつれ、面会で一切反応をしないように変わったという。片親疎外症候群が始まった、と吉田さんは見ていた。
小田切教授によれば、
「簡単にいえば洗脳ですね。同居親は別居親に絶対に渡したくないわけです。別居親がどんなに悪い人間か、子どもに毎日のように吹き込んで支配していきます」