別居親と子どもの面会交流、その切ない実態 子どもと離れた3人の経験者が語る

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今年3月、上告棄却で離婚が確定、親権は父親が得た。4月11日に面会をした息子は、次回と次々回の面会を休みたいと吉田さんに伝えた。

「連絡用にメールアドレスを教えてくれました。ただ、連絡をしても返事はありません。このまま連絡がとれなければもう会うことはできなくなるかもしれません。いつか息子の目が覚めてくれたら……」

取材中、気丈に振る舞っていた吉田さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

高木さんは、今年で3歳になる娘とトータル20時間も会っていない

高木勇樹さん(仮名)は、2009年に結婚し、翌年2月に長男が誕生。だが同じころに妻が多重債務者であることが発覚。歯車が狂い始めたという。

2年かけて借金を整理したが、再び借金をしているのが発覚。2014年7月、妻の実家に相談に行ったが、「嘘をつくな」と義父が激怒。その後、長男と一緒に実家にいた妻とは一切連絡がとれなくなり、弁護士を立てた。

調停の場で知った長女の誕生

「なぜ自分の子どもなのに会えないんだ、という怒りと悲しみ……。今まで味わったことがない感情でした。街中で“パパ”って聞こえると、反射的に振り返っていました」

長男と会えたのは1年半後。第三者立ち会いのもとだったが、「パパ〜」と駆け寄る息子と抱き合うことができ、会えなかった時間を埋めるほど濃密な時間を過ごせたという。

別居前に妊娠していた妻が長女を出産していたことがわかったのも調停の場だった。戸籍謄本を取得し、名前を知った。その娘とも2016年3月に会うことができたという。

今年4月には面会交流調停が合意。2か月に1回、3時間だけ会えることになった。

「娘も少しずつ私になれてきているようです。やっぱり可愛いですよね」と喜ぶ一方、

「娘は今年で3歳になるのに、まだ20時間も会うことができていません。長男とももっと遊んであげたい。なにより今は一緒に生活することをしたいですね。ひとつ屋根の下で生活をする。親子なのにそのごく当たり前のことが、できないのがつらいです」

ただ、高木さんは次のような反省も口にする。

「夫婦でいざこざがあると子どもは置き去りになる。トラブルになったとき相手を思いやることを忘れないでほしい。私にもそれがあれば、今の状態にはならなかったかもしれません。子どもからしたら、両方の親が必要なんです」

離婚で試されているのは子どもの立場に立った愛情の注ぎ方なのかもしれない。

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