北陸新幹線はなぜ「南回り」で大阪を目指すか 新駅予定地地元も驚き、財界も盛り上がらず

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京都の政財界は、リニア新駅を学研都市に誘致する可能性について言及する。京都市長は、将来の可能性の幅を広げるためと前置きしながら、「関西文化学術研究都市で北陸新幹線とリニアがつながると京都全体のプラスになる」と発言した(京都新聞6/20)。また、与党衆院議員は「北陸新幹線の学研都市駅ができれば、リニア新駅もそこに誘致する理由ができます」と言い始めた。

北陸新幹線を口実にリニアを京都府に持っていかれるのではないか。奈良サイドで不安視する声が出てきた。

奈良県知事は「精華・西木津ルート」に反対を表明した。地元負担は250億円もするのにメリットがないというのがその理由。リニアの新駅問題と関連づけられるのを嫌がった側面もある。

国交省は2016年11月に調査結果を報告し、これを基に、検討委は京都以東の区間について「小浜・京都駅ルート」を選択する。

この後、委員長の西田議員は第3案として「京田辺駅ルート」案を披露し、国交省に試算するよう要請した。

しかし、問題が1つ起きた。費用便益比が0.97で1を下回ると試算されたのだ。総便益が総費用を下回る公共事業に国費を投じるのは難しい。

「京都への配慮」はなぜ?

そこで第4案として浮上したのが「松井山手駅ルート」で、国交省は今年3月に結果を公表した。

<1案>北回りルート
 距離140km 建設費2兆0700億円 費用便益比1.08
<2案>精華・西木津ルート
 距離151km 建設費2兆2900億円 費用便益比0.93
<3案>京田辺駅ルート
 距離146km 建設費2兆2600億円 費用便益比0.97
<4案>松井山手駅ルート
 距離143km 建設費2兆1000億円 費用便益比1.05

 

検討委は「地域開発の潜在力が大きい」と「松井山手駅ルート」を選んだ。「北回りルート」を要望してきたJR西日本も容認したようだ。

ただ、「松井山手駅ルート」のほとんどは市街地区間で、北摂山系をトンネルで貫く「北回りルート」より工費はかさむはず。なのに、なぜ費用便益比がほとんど変わらないのか。正直、謎だ。結論ありきで建設費を調整したとしか思えない。

なぜ、与党は京都府にそこまで配慮しなければならないのか。

敦賀―大阪間の整備費2兆1000億円は、JRが支払う線路貸付料を充当するほか、残りの3分の2を国が、3分の1を都道府県が負担することになる。「松井山手駅ルート」だと、建設距離143kmのうち半分近くが京都府内を経由する。福井県の試算だと、京都府の負担は1600億円だ。2400億円という説もある。その一部は交付税で措置されるため、府の実質負担は半額程度ともいわれるが、それでも重荷なのは間違いない。

京都府の立場を考えると、京都駅だけでなく、もう1つ新駅を設置してもらわないと府民に説明ができない。北陸新幹線延伸中止を求めている府議会の共産党議員団とも対峙しなければならない。来春には京都府知事選がある。

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