スーパーがビールの駆け込み特需を煽るワケ 国税庁の新基準導入で6月から値上がり必至
6月から適用される新基準によって、小売りは仕入れ原価に人件費や光熱費などの販管費を加えた総販売原価を下回る価格で酒類を販売できなくなる。
メーカー側にはリベートの支払い基準の厳格化も求められている。そこで今年1月以降、キリンビールを筆頭に各メーカーがチラシ協賛金など、基準のあいまいなリベートを見直したため、値下げが困難になったのだ。
さらに、新基準に違反すれば酒類の販売免許が取り消されるなど、これまで以上に厳しい行政処分が下される可能性がある。
ある中堅スーパー首脳は、「いくらで売れば違反しないか、税務署に聞いても教えてもらえない。おそらくどこか1社が摘発されて初めてわかる。だから今はとりあえず価格を上げざるをえない」と困惑ぎみに語る。
店頭価格の上昇は売り上げ減少につながりかねないため、スーパー各社は対応に追われている。
勝機か懸念材料か
多摩地区地盤のいなげやは「価格訴求ができないからには、クラフトビールなど品ぞろえで勝負する」(成瀬直人社長)。
東武線沿線を中心に約60店を展開する東武ストアの大浦理専務は、「ビール類の売り上げが下がったとしても、粗利率が比較的高いワインや日本酒に注力することで酒類部門全体の利益の確保を目指す」と話す。
一方、規制強化をチャンスととらえる企業もある。大型の総合スーパーを中心に展開するイオン北海道は、イオングループのPB(自主企画品)である「トップバリュ」のビール類を拡販する。PBは広告宣伝費を節約できるなどの理由で、通常価格であってもNB(メーカー品)より安く、価格優位性を訴求しやすいためだ。
一般的にスーパーよりも割高なコンビニで、今後の価格差の縮小によってビール類の販売が伸びるとの見方もある。ミニストップの堀田昌嗣取締役は、「メーカーと共同での商品開発やキャンペーンをこれまで以上に積極化する」と鼻息が荒い。
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