「失礼します」の日本語に込められた深い真意 人は目に見えなくても支えられて生きている
しかし、私の場合はどうしても「失礼します」のひと言とお辞儀の習慣が抜けず、英語で「Hello, how are you?」と言いながらも、気持ちは「失礼します」の思いでお辞儀をしていました。最初はそんな私に戸惑い、もっと気軽にして、アメリカのスタイルを学ぶことを勧めてくれていた教授もいました。しかし、私が卒業する頃には、私がお辞儀をして部屋に入ると、お辞儀を返してくれるようになり、私はあえて日本語で「失礼します」と言ってドアをノックするようにしていました。教授いわく、誰が部屋をノックしたのかすぐにわかって便利だったそうです。
「失礼します」のいろいろな意味
「失礼します」という言葉ですが、一見簡単に英語に訳せそうに思えますが、実はそう簡単には訳せない言葉なのです。和英辞書で調べてみると、英語では「Excuse me」と表記されています。しかし、この英訳で私たちが使う「失礼します」の意味が表現されているかといえば、やはり疑問の余地は残ります。「失礼します」は、使うシチュエーションによって意味が変化し、そのつど英訳も変容します。
例えば、職場で上司や同僚より先に帰宅する際に「お先に失礼します」と言いますし、上司が誰かと会話をしている中、伝言のために話を中断しなければならないときも「お話中失礼します」と言うとはずです。このように、同じ「失礼します」でも、状況によってその意味は異なってくるのです。
ここで「失礼します」の意味を整理してみたいと思います。
「失礼します」の「失礼」には大まかに次の3つの意味があります。
①「他人に接する際の心得をわきまえていないこと」(Rude)。
②「他人のもとを立ち去ることのていねいな言い方」(See you)。
③「軽く謝ること」(Excuse me)。
私たちはこの3つの意味を、シチュエーションに応じて使い分けているのです。
ある特定の場所に入る際に使う「失礼します」は、①の意味である「他人に接する際の心得をわきまえていないこと」が含まれています。つまり、この「失礼します」は「ご迷惑をおかけしたり、邪魔をしてしまい、申し訳ありません」という謝罪の気持ちを表しているのです。この意味を踏まえれば、あるいは「I am sorry to bother you」(煩わせてすみません)と英訳できるかもしれません。
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